2024年5月16日(木)

経済の常識 VS 政策の非常識

2023年11月24日

日本のゾンビ企業はどんな企業か

 TSRのゾンビ企業比率は、前述のように、同社の保有する20万~30万社のデータベースから計算したものである。これらの会社が日本経済においてどのような意味を持っているかを考えよう。

 財務省の法人企業統計調査(21年度)で、資本金の規模ごとの会社数とその売上、資産、利益などを見ると、表1のようになる。すなわち、日本の会社数は289万社、うち資本金1000万円未満が198万社、1000万円以上が91.8万社、5000万円以上が9.4万社である。

 売上で見ると、全社の売上は1448兆円だが、資本金1000万円以上で1322兆円(全体に占める比率91.3%)、5000万以上で985兆円(68.0%)ある。TSRの20万~30万社のデータは日本経済の7~8割をカバーしていると言ってよいだろう。

 この表を見ると、日本企業の特異な行動様式が分かる。まず事実として、日本にはほとんど利益を上げていない企業が多い。資本金1000万未満の企業の1社当たり当期純利益は94万円にすぎない。

なぜ儲けようとしないのか

なぜ儲けることに熱心でない企業が多いかと事情に通じた人々に聞けば、「利益を上げないことが目的だからだ」と答えてくれるだろう。中小企業で所得が800万円以下であれば法人税が15%である。また、利益は、さまざまな経費や親族への給与支払いに使われているだろう。

 そのような企業に、何らかの経済的ショック(リーマンショックやコロナショックなど)があれば、容易にインタレスト・カバレッジ・レシオが1を割ってしまい、場合によっては債務超過に陥ってしまうかもしれない。経済的ショックがあれば赤字になるとは、むしろ不況だからゾンビ企業が増えるということである。また、節税分を考えれば、過去に十分な蓄積をしているのかもしれない。

 このような企業はない方が良いかもしれないが、このような企業があるから成長率が下がるとは言えない。なぜなら、このような企業は常にあり、それが経済の負のショックで表に現れるだけだからだ。

 筆者の考えるところ、その対策は、節税を必要としなくなるような減税と破産してもそう酷いことにならないような破産法である。例えば、個人保証の程度を弱めるような対応である。これについては、政府は改善しようとしているようだ。

原田泰氏の連載「経済の常識 VS 政策の非常識」の記事はこちら

   
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