2024年11月22日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2023年11月24日

 また、ほとんどの国で、景気の拡大とともにゾンビ企業比率が上昇している。これは景気拡大期には債務を増やし、景気下降期に過去の債務の処理で苦労することを示している。ただし、日本の場合、リーマンショック後、景気は拡大しているにもかかわらず、債務は増加していない。

 これは借金を嫌う日本企業の体質を表しているのだろう。しかし、株式市場か、社債市場か、銀行から借金をするかして、資金を調達しないと企業は成長しない。BISのレポートを眺めていると、日本企業は、借金が嫌いだから成長できないのではないかという気がしてくる。

日本ではゾンビ企業はどれだけあるか

 ゾンビ企業を計算するのは、個別企業のデータがないと難しいが、幸いなことに東京商工リサーチ(TSR)が計算をしてくれている。TSRのゾンビ企業の定義は、BISの定義を簡略化したもので、「3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオが1を下回る企業」としている。利益が利払いに消えてしまっている企業は、ゾンビだというのである。

 さらに、TSRは、営業利益+受取利息・配当金を営業CF(キャッシュ・フロー)に置き換えた基準、債務超過でもある企業をゾンビ企業とした定義も計算している。これらを示したのが図1である(ゾンビ企業の詳しい定義は図1の注を参照)。

 なおここでインタレスト・カバレッジ・レシオが1以下である企業で債務超過でない企業と債務超過である企業との差は09年から12年では10%を超えているから、債務超過企業が調査対象である20万から30万の企業のうち少なくとも10%以上あったことになる(現在では6%程度)。これが何らかの非効率の指標であることは明らかだが、これらの指標から、ゾンビ企業があるから成長率が低下したと言えるだろうか。

 図1には、名目国内総生産(GDP)も示している。名目GDPが停滞していた12年まではゾンビ企業比率は上昇していた。ところが、12年以降、名目GDPが増加するとともにゾンビ企業比率が低下した。

 20年のコロナショックの後には名目GDPが低下し、ゾンビ企業比率が上昇を始めた。ゾンビ企業比率は上昇したままであるが、名目GDPが増加するとともに、再びゾンビ企業比率が低下するだろう。

 ちなみに、名目GDPと5つのゾンビ企業比率との相関を取ると、相関係数はマイナス0.906からマイナス0.772となる。名目GDPのレベルが高ければゾンビ企業比率は低くなることが明らかである。

 また、名目GDPが低下してから企業業績が大きく低下するまで多少時間がかかると思われるので、名目GDPに1年のラグを付けると、相関係数はマイナス0.959からマイナス0.841となる。確かに、ゾンビ企業比率とGDPの停滞とは相関しているのだが、筆者は逆に名目GDPが停滞したからゾンビ企業比率が上昇したと思う。そのことを考えるために、データの中身に入って考えたい。


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