2024年11月22日(金)

勝負の分かれ目

2023年12月2日

日本人投手が話題を席巻

ドジャースファン(AP/AFLO)

 今オフのMLBストーブリーグは日本人投手が話題を席巻している。ミネソタ・ツインズからFAとなっていた前田健太投手がデトロイト・タイガースと2年契約を結び、移籍が決まった。契約内容は総額2400万ドル(約35億6400万円)で背番号は「18」となった。

 右肘の靭帯再建手術(トミー・ジョン手術)から今季は591日ぶりに公式戦登板を果たし、復帰した。21試合登板のうち20試合で先発マウンドに立つと6勝8敗、防御率4・23、117奪三振をマーク。特に9月は5登板で3勝1敗、防御率2・81と好成績を残し、チームの3年ぶり地区優勝に貢献した。

 ツインズも前田に契約延長をオファー。水面下で他の複数のMLB球団も獲得に乗り出していたが、最終的に前田はタイガースを選択した。トミー・ジョン手術はリハビリを経て実戦復帰から1年前後をメドに肘の状態がさらに向上する傾向が強いとみられており、タイガース側としては来季の前田が今季以上に真価を発揮すると分析し、大きな期待をかけているのは言うまでもない。

 その一方で今オフは他の日本人選手たちもMLBのストーブ市場を大いに賑わせている。チームを3年連続のパ・リーグ制覇に導き、自身も史上初の3年連続「投手4冠王」に輝いたオリックス・バファローズの山本由伸投手は〝NPB組〟の中で、その筆頭だ。

 そして山本とともに今春のWBCで侍ジャパンを3大会ぶりの世界制覇へ導き、決勝の米国戦先発マウンドでもメジャーリーガーを相手に好投した横浜DeNAベイスターズの左腕エース・今永昇太投手もMLB球団から熱い視線を浴びている。所属球団から容認され、ポスティングシステム申請手続きを行った山本と今永は複数のMLB球団の間でそれぞれ争奪戦がぼっ発しており、さまざまな球団名が米メディアの間で取り沙汰されている状況だ。

 海外FA権を行使し、東北楽天ゴールデンイーグルスからMLB挑戦を表明した松井祐樹投手もNPB史上最年少200セーブの肩書きを引っ下げ、同じく複数球団が獲得調査に動き出しているとみられている。ただ、北海道日本ハムファイターズからポスティングシステムを申請した上沢直之投手は前出の3投手に比べるとネームバリューと実績に乏しいことから年内決着は厳しい上に、満足のいくような条件は得られないかもしれない。

 そしてボルチモア・オリオールズからFAとなった藤浪晋太郎投手は来季残留を基本線に球団側と話し合いが進められている模様だ。

 とはいえ、MLBのストーブ市場に出回る日本人選手の中で最大の注目は何と言ってもロサンゼルス・エンゼルスからFAになった大谷翔平投手だ。

 MLB6年目の今季は開幕前から第5回WBCに侍ジャパンの投打の中心として参加。大車輪の活躍でチームの世界一奪回に大きく貢献した。その疲労も感じさせないまま開幕を迎え、今季打者として打率.304、44本塁打、95打点の成績で日本人初のア・リーグ本塁打王タイトルを獲得。投手としては23試合・132回を投げて、10勝5敗、防御率3・14の成績を残し、全米記者協会(BBWAA)の投票で2021年以来自身2度目のア・リーグMVPに輝いた。

 言うまでもないことだが、日本人選手の複数回にわたるMLBでのMVP受賞は史上初の快挙。しかも今年は「満票」で選出された。大谷がプレーしたエンゼルスは西地区で73勝89敗で勝率4割5分1厘の4位に沈み、9年連続でポストシーズンを逃しただけに、いわば「低迷球団」だ。そんな借金16もあるチームの中から格式の高いBBWAAの投票者たちによって「満票」でMVPに選出された事自体がレアケース。いかに大谷が高い評価を得ているかがうかがい知れる。

 ちなみに大谷はシーズン終了間際の今年9月に右肘のじん帯を修復する手術を受けた。具体的な術式は明らかにされていないが、自身2度目となった今回の右肘手術は前回5年前にメスを入れた際のトミー・ジョン手術ではないとみられている。関係者の話を総合すると今回、大谷が行った手術は新術式「インターナル・ブレース」と呼ばれ、人工じん帯を患部に移植して損傷したじん帯を強化する方法ともっぱらだ。

 この方法ならばトミー・ジョン手術よりもリハビリ期間の大幅な短縮が見込め、2025年シーズンから投手として本格復帰が可能になるという。つまり再来年のシーズンでは開幕から二刀流起用の計算が立つという算段だ。当然ながら、こうしたリハビリ過程も承知の上で大谷獲得に乗り出している各球団は総額5億ドル(約750億円)ともいわれる超大型契約の資金を工面し、大谷の代理人ネズ・バレロ氏と既に話し合いに入っていると思われる。

 少なくとも来季の2024年シーズンで大谷は打者一本、DH起用のみとなる。それでも、その価値は史上空前レベルであることに何ら変わりはなく、ましてや大谷の二刀流復帰が当初の見込みよりも「約半分ほどにまで短縮される」となれば、米紙「ロサンゼルスタイムズ」が報じたように新契約が「総額6億ドル(約801億円)に達する」と見積もる向きもあながち的外れではない。


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