2024年12月6日(金)

勝負の分かれ目

2023年8月11日

9日の試合、3回の打席での大谷選手(AP/AFLO)

 日本が誇る二刀流スーパースターは一体どこまで進化を遂げてくのだろうか。ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手が8月9日(現地時間)の本拠地サンフランシスコ・ジャイアンツ戦で先発マウンドに立ち、6回を97球、3安打3四球1失点で今季10勝目を挙げ、MLB史上初となる2年連続の「2桁勝利&2桁本塁打」を達成した。「2番・投手兼DH」でフル出場し、打っては2打数無安打2四球1得点。4―1で勝利したチームに投打フル回転で大きく貢献し、試合後はエンゼルスタジアムに集まったファンから一際大きな歓声を一身に浴びた。

 立ち上がりは制球にやや苦しみ、2回に長打と四球を許すとバッテリーを組んだマット・タイス捕手の牽制悪送球も重なってピンチを拡大し、そこから先制犠飛で1点を失った。それでもマウンド上では冷静さを失うことなく、いつのように泰然自若。3回まで毎回走者を背負ったが、徐々にギアを引き上げて4回以降は降板する6回まで相手の攻撃を3人で終わらせ、本来のリズムを取り戻した。魔球スイーパーをウイニングショットにするシーンも見られ、終わって振り返ればジャイアンツの強力打線を僅か3安打、5つの三振も奪う力投でチームを2連勝に導いた。

 昨季は投手として15勝、打者として34本塁打をマークし、神様ベーブ・ルース以来、104年ぶりの「2桁勝利&2桁本塁打」を達成。その偉業を史上初めて2年連続で成し遂げた。もう、ここまで何度も繰り返されているが、あらためて大谷は〝ルース超え〟を果たしたことを証明したと言える。

 前回登板の本拠地シアトル・マリナーズ戦(8月3日)では4回まで無失点に抑えながらも右手中指の痙攣で途中降板。それまでも1週間ほど前から披露蓄積が原因とみられる痙攣を頻発させ、計2試合で途中交代に追い込まれていた。米スポーツ専門局「ESPN」でも「Sprts Center」という人気番組内でアンカーが〝満身創痍〟の大谷を見かねたのか、思わず「可能であるならばオオタニは休んだ方がいいと思うのは私だけでないはず。どこかで休息を取らないと、球界の宝物がパンクしてしまう危険性も出て来る」と警鐘を鳴らしていたほどだった。

 だが、そんな周囲の心配をヨソに「規格外」「異次元」の身体能力で世界を驚かせ続けてしまうのが大谷の真骨頂だ。決してコンディションが万全でない状況下でも中5日の先発登板で投打同時出場を果たし、チームを勝利に導くとともに伝統あるMLBの長い歴史も塗り替えてしまったのだ。やはり大谷は最近、その余りの凄さを驚嘆されて米メディアや有識者の間からもジョーク交じりの例えでよく指摘されているように「彼は人間ではない」のかもしれない。


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