しかし、この「日本食ブーム」も場所を変えると少し見え方が変わってくる。東京の豊洲などに似ている「ミレニア ウオーク」やオーチャード通りなどのショッピング街。フードコートが現地の若い人たちを中心に賑わっているのだが、日本食を出している店舗は少数派なのだ。
多いのは中華系の住民が多いこともあり、中華料理店。昼でも夜でも1食1000円程度で食事が楽しめる。中華料理で使われているのは日本米のような短粒種ではなく、長粒種である。
日系スーパーと現地スーパーの違い
では、スーパーなどの小売で日本の農産物はどのように販売されているのか。
日系デパートやスーパーでは、日本産農産物が多く見られた。売り場で日本米の試食販売をしていたシンガポール人販売員の女性は、「日本産米は人気で中国人、日本人が買っている。とくに環境面を前面に出している長野県や兵庫県のお米は美味しいし、人気が高い」という。
日系スーパーには日本からの高級果物が並ぶ。ジェトロ調査(22年12月~23年3月)によると、日系スーパーマーケットで長野産のシャインマスカットは500グラム(g)35.80シンガポールドル(約4000円)といった価格帯だ。日系スーパーでは、シャインマスカットが複数の店舗の入り口で目玉として売られており、一定の顧客がいると考えられる。
ただし、日系でない現地の人たちが日常的に足を運ぶスーパーの入口には、中国産や韓国産のシャインマスカットなどの果物が陣取る。とくに中国産は1房約1000円と安価でシンガポールの消費者から一定の支持を得ているようだ。
また、野菜は隣国マレーシアなどからの輸入品が多く、日本の野菜は日系スーパー以外では、ほとんど見かけなかった。
コメは、日系以外のスーパーではベトナム、タイ、米国、豪州産の短粒種がキロ(㎏)200~500円前後で売られていた。日本からの輸入米は㎏600~1500円と割高である。なお、長粒種はベトナムやタイなどから輸入され、㎏200円前後で販売されていた。ネットスーパーでも日本産米の高価価格傾向が見て取れる。