2024年夏のパリオリンピック(五輪)も、この兄妹の活躍に目が釘付けになるだろう。柔道男子66キロ級の阿部一二三と女子52キロ級の阿部詩(ともにパーク24)だ。
3年前の21年東京五輪では史上初めて、兄妹が同日に金メダルを獲得する快挙を達成した。東京五輪後に2度開催された世界選手権はともに2連覇を果たすなど、2人とも「無双状態」で兄妹そろっての五輪2連覇に視界良好だ。
進化を続ける詩
1年を締めくくる柔道の国際大会は例年、東京を舞台に開催される。昨年の12月2、3日、グランドスラム(GS)東京大会が東京体育館で開催された。
注目階級が集中した3日、先に金メダルを手にしたのは妹の詩だ。不戦勝を含む5試合をオール一本勝ち。全く危なげなく、2年連続4度目の頂点に立った。
圧巻はフランス勢との決勝だった。ここで、詩が進化を見せつけた。練習を積み、懐にしのばせてきた足技の小内刈りで鮮やかに一本を奪った。
「最後はずっと練習していた足技で勝ててよかった。小内刈りでの一本勝ちは初めてですね。自分でもびっくりしました」と振り返るほどの鮮やかさ。わずか59秒での圧勝だった。
詩の得意技は、兄の一二三と同じ袖釣り込み腰、そして豪快に投げる内股だった。世界選手権は18年以降に出場した4大会全てで優勝し、東京五輪も金メダル。ずっと世界のトップに君臨する23歳の若き女王に対し、海外勢も対策を練ってきた。詩も従来のスタイルだけでは「警戒されている」と打ち明ける。
新たな〝引き出し〟として投入したのが、フェイントとしても使える足技だった。試合後の詩は「足技があるんだと思われると、戦いやすくなるんじゃないですかね。相手も違う対応をしてくるだろうから、自分の担ぎにも入りやすくなる」と収穫点に挙げ、「2024年に向けていいスタートが切れた」とうなずいた。
所属のパーク24には、男子60キロ級東京五輪金メダリストで、小内刈りの名手でもある高藤直寿がいる。高藤が、詩の母校である日本体育大学で練習しているときの動きを「見て盗んだ」という足技の習得によって、柔道の幅が広がった。