脱ロシア依存を目指す
同時に、フランスはロシア産化石燃料に代わる調達先を探し求めています。そこで、マクロン政権は仏石油大手トタルエナジーズによる資源関連事業の実施国であったものの主要な輸入先でなかったアラブ首長国連邦(UAE)とカタールに大きな期待を寄せています。22年7月、UAE のムハンマド大統領によるフランス訪問時、トタルエナジーズはUAEからのディーゼル燃料調達に関するパートナーシップ契約をアブダビ国営石油会社(ADNOC)と署名しました。
また、トタルエナジーズは22年6月にカタールの「ノース・フィールド・イースト」ガス田で、同年9月に「ノース・フィールド・サウス」ガス田で新規事業への参入を発表し、カタールのLNG増産体制の構築に着手しました。23年10月には、フランスへのガス輸入を目的に、27年間にわたって年間最大350万トンのLNGを調達する契約をカタールエナジーズと締結しました。
さらに、フランスは原子力発電用燃料であるウランの安定確保にも動き出しています。主要輸入先のニジェールで23年7月の軍事クーデターが起き、反仏路線の軍事政権が発足したことで、フランス・ニジェール関係は深刻化しました。
これを受け、マクロン政権は同年12月にニジェール駐留部隊の引き揚げを完了するとともに、在ニジェール仏大使館の無期限閉鎖を発表しました。フランスのウラン輸入におけるニジェール産の割合は22年に20%(約1400万トン)に達するため(図4)、関係決裂がニジェールにあるフランスのウラン権益の剥奪につながった場合、ニジェール産ウランの輸入が停止することが懸念されます。
こうした中、マクロン大統領は23年10月にモンゴルを訪問し、モンゴル南西部ドルノゴビにあるウラン鉱床の探査に向けてフランス・モンゴル合弁事業に係る協定を結び、モンゴル産ウランの将来的な輸入に動き出しました。翌11月には、ウランの主要輸入先であるカザフスタンとウズベキスタンを訪問し、ウラン追加調達を見据えて両国との関係強化を図りました。
ただ留意すべき点は、カザフスタン、ウズベキスタン、モンゴルとも内陸国であるため、ウラン輸出時にロシアとの協力を必要とする場面があることです。この点から、フランスはウラン産出国で資源開発を手掛けるだけでなく、ロシア領内を迂回するウラン供給網を確立してこそ、脱ロシア政策を達成できると言えるでしょう。