2024年12月12日(木)

脱炭素・脱ロシア時代のエネルギー基礎知識

2024年1月11日

 また電力危機を受け、フランスは周辺諸国からの電力輸入の拡大に踏み切りました(図3)。こうしてフランスは1980年以降、初めて電力の純輸入国に転落しました。フランスの原発不振は、電力の輸出入に基づく相互依存関係を通じて、周辺諸国の電力供給にも悪影響を及ぼしました。

 加えて、フランスは欧州連合(EU)加盟国として、ロシア産化石燃料からの脱却という課題にも直面しました。EUはロシアの戦費につながる資源収入を断つため、2022年12月に海上輸送による原油輸入を、23年2月には石油製品の輸入を禁止しました。またロシア産のガス輸入抑制を目的に国内消費量の15%削減に努めながら、27年までに全てのロシア産化石燃料を禁輸する計画です。

 フランスのロシア産への依存度は22年末時点、原油が5%、天然ガスが15%にのぼりました。また、石油製品(とりわけディーゼル)は21年末時点、総輸入量の19%をロシア産に頼っていました。このため、エネルギー面での脱ロシア化を実現するには、原子力政策の立て直しや代替調達先の確保が急務となりました。

自立的なエネルギー政策の再構築

 フランスのマクロン政権は現在、原子力政策の立て直しを図っています。22年2月、6~14基の新しい原子炉を建設するとともに、全ての原子炉の運転期間を50年以上に延長する方針を発表しました。

 マクロン政権はそれまで、オランド前政権が15年に発表した「グリーン成長に向けたエネルギー移行法」を踏襲する形で、35年までに原発依存度を50%まで引き下げ、14の原子炉の廃炉を表明していました。しかし、同方針を転換し、再生可能エネルギーを導入しながらも、原発の役割を引き続き重要視しています。

 フランスが大型炉の新設や小型モジュール炉の開発を急ぐ背景には、既存炉の老朽化があります。フランスの原子炉の大半(全56基のうち46基)が70年代と80年代に建設されており、運転開始から約40年が経過しています。

 マクロン政権は安全性の確保を前提に長期運用を検討している一方、廃炉問題を先送りしたに過ぎず、いずれかの段階で運転の停止を決断せざるを得ないです。フランスが戦後に国家プロジェクトとして育成してきた原子力産業を維持するためにも、原子炉の新設は避けられないだろう。

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