2024年5月14日(火)

一人暮らし、フリーランス 認知症「2025問題」に向き合う

2024年3月15日

有害物質はどう気をつける?

「排気ガスや、残留農薬、海産物に蓄積した重金属などの他、虫歯治療で昔よく使われていた詰め物に含まれていたアマルガムという水銀や、カビ毒、歯周病菌などが認知症の原因になることがわかっています。中でも注意すべきは、カビ毒と歯周病菌で、2015年にアルツハイマー病患者11人の遺体から得られた脳組織と脳血管に数種類の真菌とその関連物質が発見されました(→注1)。これらはアルツハイマー病にかかっていない対照群にはみられなかったことから、アルツハイマー病と真菌の関連が注目されるようになりました。

 また、フィンランドの認知症死亡率が世界の中でも最も高いことから、フィンランドにおける環境要因が調査されました。その結果、フィンランドは非常に寒く、湿気が多い気候のため、神経毒性があるマイコトキシンを産生するカビが家の中に増えやすいことが理由の一つとして挙げられています(→注2)。

 歯周病はどうだろうか。

「歯周病は、炎症を起こすことにより脳の働きに悪影響を与えるだけでなく、脳以外の場所で作られたアミロイドβを脳内に取り込まれやすくするといったメカニズムが報告されていますし(→注3)、実際、歯周病がある人はない人と比べて認知症になるリスクが1.78倍になるといった報告もあります(→注4)」 

 カビや歯周病が認知症に関係するとは意外な印象ではあるが、もしも自分でできることがあるのなら、対策を行っていきたいところだ。何をすれば、いいのだろうか。

「虫歯や歯周病は、自宅でできるセルフケアだけでは完全に予防することは困難です。定期的に歯科に通院し、専門的なケアを受け続ける必要があります。

 また、カビ毒については、食品から取り込まないように注意するのに加え、日本の場合は湿気が多い気候なので、換気をこまめに行ったり、エアコンや水回りなどを定期的に掃除するのが大事です。また、食べ物にカビが生えることもあるので、保存方法に気をつけ、できるだけ早めに食べてしまうようにしましょう」

 このほかに、「有害物質を取り込んでも排出できる体を作っておく」のも大事なのだとか。

「その手段として、日々の食事に肝臓の機能を高め、解毒を促す働きを持つ食品を取り入れるのも有効です」

 有害物質を排出・解毒するという意味でも、とても大切な食事。

 次回は、リコード法の食事プログラム「ケトフレックス12/3」を紹介する。

注1)参考論文:Pisa, D., Alonso, R., Juarranz, A., Rábano, A. & Carrasco, L. Direct visualization of fungal infection in brains from patients with Alzheimer’s disease. Journal of Alzheimer’s Disease 43, 613–624 (2015).

注2)参考論文:Eiser, A. R. Why does Finland have the highest dementia mortality rate? Environmental factors may be generalizable. Brain research 1671, 14–17 (2017).

注3)参考資料:九州大学2020年発表記事https://www.kyushu-u.ac.jp/f/39772/20_07_03_01.pdf

注4)参考論文:Hu, X., Zhang, J., Qiu, Y. & Liu, Z. Periodontal disease and the risk of Alzheimer’s disease and mild cognitive impairment: a systematic review and meta‐analysis. Psychogeriatrics 21, 813–825 (2021).

【今野裕之先生】
医学博士。ブレインケアクリニック名誉院長、一般社団法人 日本ブレインケア・認知症予防研究所代表理事、所長。順天堂大学大学院にて、老化予防・認知症予防に関する研究を行い博士号を取得。大学病院や精神科病院での診療を経て2016年にブレインケアクリニックを開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療にあたる。また、認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立。著書・監修に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術(青春出版社)」など。最新刊『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう 認知症診療医に教わる最強の生活習慣』(世界文化社)が5月30日発売予定。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、日本抗加齢医学専門医。
【リコード法】
カリフォルニア大学名誉教授・デール・プレゼデン博士が開発した認知症の治療プログラム。リコード法の公式サイト(APOLLO HEALTH https://www.apollohealthco.com)によると、日本の認定医は2024年2月末時点で5名。ただし、今野先生によると「リコード法に準じた食事法などを治療に取り入れる医師や医療機関は増えつつある」と言う。治療は自由診療となり、金額は医療機関により異なる。

   
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