不買運動の波及を恐れたトルコ、エジプト、レバノン、サウジアラビアなどペルシャ湾岸諸国のマクドナルド店は「自分たちがイスラエルの店とは全く無関係だ」と訴え、ガザの住民や病院などに寄付を行っていることなどを発表して防戦に努めた。しかし、TikTokなどを中心にイスラエルを支援する米欧企業の「リスト」も出回り、ボイコットが瞬く間に広がった。トルコやレバノンなど一部の店舗は破壊された。
カイロのマクドナルドやスタバの店舗では今も客の姿はまばらのままだ。エジプトのマクドナルドは4万人の雇用を担っているとされ、影響も大きい。不買運動はアラブ世界だけではなく、アジアのマレーシアなどにも波及。同国のスタバの23年の売り上げは前年比38%も落ち込んだという。
不買運動の影にいるもの
こうした不買運動をけん引しているのがイスラエルを支持する企業やビジネスのボイコットを呼び掛ける団体「BDS」だ。05年に創設されたBDSの名称は「ボイコット、投資撤退、制裁」という英語の頭文字を揃えたもので、反イスラエル、親パレスチナの活動を行ってきた。
米ワシントン・ポストによると、BDSがスタバやマクドナルドの他に標的にしているのは、スポーツウエア・ブランドの「プーマ」、化粧品・スキンケアの「アハバ」などだ。「プーマ」はイスラエルのサッカー協会のスポンサーだったと指摘されている。世界的な米映画製作会社もイスラエルの特務機関モサドの工作員を主役にした作品の製作を検討しているとして標的にされた。
同紙によると、戦争開始から2カ月で、TikTok上のハッシュタグ「ボイコットイスラエル」には3億4000万回の閲覧があったという。欧米ではBDSを反ユダヤ団体と認定している国もある。米下院は5年前、BDSに対する非難決議を可決している。
イスラエル企業と商取引のある日本企業も多い。しかし、ガザ戦争へどう対応しようが、いったんイスラエルとの関係が取り沙汰されると、SNSで一瞬にして誤った情報が拡散してしまいかねず、細心の注意が必要だ。伊藤忠商事は2月、子会社の「伊藤忠アビエーション」がイスラエルの軍事企業と結んでいた協力関係の覚書を終了すると明らかにしている。