3月4日の東京株式市場で、日経平均株価は史上初の4万円台を乗せた。その後は、米国市場の下げに引きずられて4万円を割り込んだが、6日になると、再び終値では4万90円と4万円台に戻した。とにかく、34年にわたって回復できていなかった1989年12月29日の20世紀の最高値(3万8915円87銭)を更新し、当時は届きそうで届かなった4万円台が実現したのである。
このニュース、久々の明るい話題として報じられており、岸田文雄首相などは「日本経済に勢いが出てきた」などと〝はしゃいで〟いるが、冗談ではないと思う。この話題自体、現時点で喜んではいけない。何が問題なのか、今回は、3点にわたって議論してみようと思う。
国内経済にはまわらない好業績
1つ目は、今回の株高は日本国内の経済が好調であることを反映したものではないということだ。まず、自動車産業に代表される日本発の多国籍企業の多くは、極端なまでの空洞化を進めている。
空洞化とは、まず売上の海外比率が8割とか9割という海外市場への依存があり、また徹底した現地生産化のために最終組立もほとんどが海外となっている。自動車の場合は、その結果としてデザインも国外で開発するし、自動運転車(AV)、電気自動車(EV)などの開発もテック人材の豊富な海外で行う場合がある。
いわゆる総合商社にも似た構図がある。かつては輸出入のノウハウを一手に引き受けて、国内企業と国際市場を仲介して日本の国内総生産(GDP)に貢献していた商社だが、現在は違う。世界に広がるさまざまな投資案件を管理する、いわば業界別に深く関与するタイプの投資ファンドの集合体となっているのだ。したがって、その業績は海外の景気動向に依存している。
このように極端に海外依存体質を持つ日本発の多国籍企業は、現在の円安の利益を享受している。それは、円安が国内のコストを下げて、外貨建ての売上を大きくするといった、かつての「世界の工場」であった日本経済の構造とは異なる。
海外で発生した売上利益が「円安のために膨張して見えるだけ」ということだ。多くの企業が「史上空前の好決算」だとしている一方で、国内の賃金は上がらず、非正規労働が減らないのにはこのためだ。