2024年11月21日(木)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2024年3月22日

 その意味で、日本経済というのは米国とは好対照という見方もある。極端な高齢化に直面し、消費マインドが冷え込む日本は、分厚い現役世代の人口が旺盛な消費を続ける米国から見ると、全く正反対ということも言えるだろう。その意味で、今回の日本の利上げのニュースとその背景にある日本経済の特徴というのは、一般的な米国人の視点からは「全くの別世界」ということにもなる。

日本株は「高リスク投資」

 もう一つは、投資先としての日本という視点での見方だ。米国の投資家の中には、日本株への関心は比較的高い。

 何よりも中国市場が不動産バブル崩壊の中で、非常に不安定となる中で、その代わりに比較的安定した日本への投資を強めるという動きがある。著名な投資家、ウォーレン・バフェットが日本の総合商社について、業界の専門知識を持って世界中の案件に投資を行う特殊なファンドだという特性を見抜き、その上では割安感があるとして投資を成功させたニュースは比較的良く知られている。

 こうした日本株への関心は、日本が中長期に成功しそうだという見方から来ているかと言うと、そうでもない。むしろ、株価の上下と、為替相場の上下が掛け算される中で、ボラティリティ(上下変動の可能性)が大きく取れることから、自分の資産ポートフォリオの中に「高リスク投資」として組み込むという動機が大きい。

 その意味では、米国の投資家からは、円安時に仕込んだ日本株を、この後にもしも円高になれば、ドル換算で大きな差益を伴って売却できるという思惑がある。もちろん、円高になれば日本株は下がるかもしれないが、その直前に、円は高くなってドル建て株価が膨張する瞬間があるはずで、そこで売って利益を確定しようというのである。

 こうした観点からは、今回の利上げに対して為替相場が反応しなかったことは、少々気がかりのようだ。米国の連邦準備制度理事会(FRB)は既に、これ以上の利上げを停止するとして、反対に利下げの可能性も示唆している。であるならば、今回の日銀の利上げによって、日米の金利差は急速に縮まることが考えられる。にもかかわらず、円が上がらなかったというのは、米国の投資家からはやや失望感を伴っているようだ。

 この点に関する解説としては、植田日銀が19日の時点では追加利上げの見通しを示さなかったので、円は上がらなかったというストーリーが一般的だ。こうした見方を受けて、20日から21日にかけては、世界中のアナリストが「7月追加利上げ説」であるとか「いや次の利上げは10月」あるいは「全ては米国のFRBの動き次第」などとさまざまな予測を打ち出し始めた。だが、それで市況が動くわけでなく、1ドル150円から151円と、円は依然として弱含みである。


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