長村氏が指摘する品質管理の甘さとは、後述するGMP(Good Manufacturing Practice の略。「適正製造規範」と訳す)のことだ。つまり、今度の事故によって、トクホや機能性表示食品のような保健機能食品の制度全体が抱えている品質管理に関する重要な問題点が露呈したと長村氏は考える。
問われるべきは国の食品安全行政
では、さらに問題の根本的な原因はどこにあるのだろうか。
健康食品問題に通じた健康食品ビジネスコンサルタントの武田猛氏(グローバルニュートリショングループ社長)は「根本的な原因は日本の食品安全行政にある」と指摘する。健康食品の原料の安全性に関して、厚生労働省は「錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」(05年、24年改正)を示し、企業に対して順守するよう指導してきた。ただ、あくまでもガイドラインであり、国が直接、ガイドラインが製造現場で順守されているかをチェックしているわけではない。
武田氏は「日本ではサプリメントの法的な定義がなく、それを規制する法律もない。欧州連合(EU)や米国では国が関与して安全性を担保する厳しい法律をつくっている。健康食品の安全性を企業にゆだねているのは日本くらいではないか」と厳しく指摘する。
GMP認証マークの誕生
つまり、健康食品の分野で海外では当たり前に普及しているGMPの導入が日本では大きく遅れているのだ。GMPは原料の受け入れから最終製品の出荷までの全工程で適正な製造管理と品質管理を定めたものだ。いうまでもなく、医薬品は医薬品医療機器等法(旧薬事法)によってGMPの順守が義務づけられており、今度の事故のような例は極めて起こりにくい。品質管理が徹底しているからだ。
健康食品の安全性を確保するためにGMPの導入が重要なことを認識していた厚生労働省は05年に「GMPマークを目印に健康食品を選びましょう」とのリーフレットをつくり、消費者に啓発してきた。その中で健康食品にGMPが必要な理由として、厚労省は「製品中に含まれる成分量にバラつきができたり、汚染などにより有害物質が混入したりする可能性がある。この問題を未然に防ぐためにGMPが導入されるようになった。国際的にはGMPの義務化や自発的な取り組みが推進されている」と述べている。