2024年5月17日(金)

Wedge REPORT

2024年4月3日

 しかし、そこまでGMPの重要性を認識していながら、法律で義務づけることはなかった。

 一方、この厚労省のGMPガイドラインに基づき、メーカーで組織した「日本健康・栄養食品協会」と「日本健康食品規格協会」の2機関は申請企業に対してGMP認証を行い、合格した製品にはGMPマーク(前頁リーフレット画像の下段参照)を付与してきた。ところが、GMP認証マークはほとんど普及していない。646社が加盟する「日本健康・栄養食品協会」はホームページで「GMPは安全な健康食品の製造に必要不可欠です」と強調し、普及に努めてきたが、残念ながらGMPマークのついた健康食品はほとんど見かけない。

どう厳格化するか

 小林製薬の紅麹サプリメントは日本健康・栄養食品協会からGMP認定を受けた工場で製造されていたものの、製品にGMPマークはない。やはり問われるべきはGMPの中身であり、2機関の認証の方法が現行のままでよいかも今後の課題となるだろう。

 武田氏は「健康食品の製造に対して、GMPを法律で義務づけている米国では、たとえば原材料の100%同一性を確認する試験が求められており、最終製品のメーカーだけでなく、サプリメント原料の製造企業にもGMP準拠が求められているため、今回のような事故は起こりにくいといえる。米国では国の行政官が工場の立ち入り査察を行っているが、日本では民間の機関(上記の2機関)が規範を作り、監査しているに過ぎない。その差は大きい」と話し、日本のGMPを米国のような先進国並みに厳しくすべきだと訴える。

 小林製薬のような一流企業でも事故が起きたことを考えると、機能性表示食品にもなっていない「いわゆる健康食品」では今後、同様の事故が起きる可能性が高い。健康食品の安全性に網をはるGMPが単なるガイドラインでよいはずはない。

 今度の事故の教訓は日本の緩いGMPをどう厳格化するかであるが、そうした視点が新聞やテレビの報道では全く欠落している。今回の事故は日本の食品安全行政の弱点を突く重大な課題を突き付けたといえよう。

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