2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月1日

 2番目の柱は、日本とカナダがより積極的に参加する可能性が高い、新しい戦略技術の開発に関わるものだ。これには、ドローン戦術、超音速、電子戦、AI等の分野が含まれる。日本とカナダは、産業力と重要な鉱物資源を持っているが、どれだけ貢献できるかは明確でない。先進軍事技術の面でこのグループを主導するのは、依然として米国である。

 AUKUSに対する最後の批判は、中国等が指摘するもので、それは「アングロスフィア(英米圏)」の力を維持しようとするものだということである。しかし、日本のAUKUSへの関わりはそのような考えを否定する。

 AUKUS参加国を結びつける根本的なものは、それらが全て自由民主主義国であり、インド太平洋地域が独裁主義の中国と復讐主義のロシアの影響下に落ちることを防ごうと決意していることだ。このような安全保障協力強化の努力は歓迎される。更にやるべきことがもっとある。

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岸田首相の訪米による成果

 上記は、極めて明快な、前向きの議論である。この社説は、先進技術協力のためのAUKUS第二の柱への日本やカナダなどの参加を「歓迎」するとともに、これからもっとやるべきことがあると述べる。

 その中で、AUKUSの中心は豪州の原潜取得にあると釘を差しつつも、「中国の主張するAUKUSが地域の緊張を高めたという原因論は、逆である」と中国の主張を否定し、「(AUKUSは)中国の軍事力増強に対して地域の抑止力を回復する努力の一部だ。AUKUSについて最も重要な質問は、それが正当化されるかどうかではなく、それが十分であるか、そしてトランプが米国で再び権力を持った場合でも意味を持ち続けるかどうかである」と主張する。

 さらに中国のアングロスフィア(英米圏)批判論につき、日本のAUKUS連携を指摘して、中国の批判を否定する。社説は、日本との連携を積極的に評価している。

 4月10日の岸田文雄首相訪米の際の首脳共同声明は、この件に言及し、AUKUS参加国は「AUKUS第二の柱(先進技術プロジェクト)において日本との協力を検討している」と明記している。これに先立ち、米英豪の国防相は4月8日、AUKUSの先端技術分野の協力に日本の参加を検討すると正式に発表した。

 日本は、今後行われる三国との協議に積極的に関与し、有益な協力ができるように努めていくべきだ。なお、豪州内には、日本等との関係強化を支持する一方、機密性の高い情報や知的財産の移転を巡る懸念があることにも留意し、日本は情報保護の体制を一層整備していくことが必要である。

 4月9日からの岸田首相の国賓待遇での訪米は、大きな成功だった。4月10日の岸田・バイデン首脳会談も濃密な会談だったようであり、その後の日米共同声明を見れば、防衛を中心に日米の同盟関係が大きく進化していることが読み取れる。


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