2024年7月16日(火)

お花畑の農業論にモノ申す

2024年5月17日

 また、この実務者勉強会と歩調を合わせるように農政調査委員会は、23年7月から11月末まで7回にわたり「農産物市場問題研究会」を開催した。この研究会は、農畜産物の市場の形態や価格形成について専門家を招いて、その重要性を広く認識してもらい、コメの市場開設は欠くことができない極めて重要なことを周知してもらうことに狙いがあった。

 24年の2月に取りまとめられた報告書には要点として5つの項目を上げている。   

① 水産物、食肉等では、経由率こそ下がっているが、市場は「価格形成・評価の拠点」として重要な役割を果たしている

② コメには<価格評価→生産・供給の誘導の場>=市場がない

③ 現物市場・先渡し市場・先物市場が存在し機能を全うすることで、トータルの市場は社会的な意義を果たせる

④ 需要減と生産調整などで日本のコメ市場は縮小しているが、人口・経済が拡大している国々にはコメの大きなマーケットがある。環太平洋地域はコメの同一市場になりつつあり、日本がコメ輸出のイニシアティブを取れるはずが、現在は、中国・大連取引所が主導

⑤ 政策を直接支払いに切り替え、国際競争に耐えるように「価格は市場で、所得は直接支払いで」

 これら5つの項目は、今後の日本農業のあり方を政策的に変える方向性が示唆されているが、特に〝市場〟の重要性を強調、公平で自由な現物市場と先渡し市場+先物清算市場があることが「コメが産業化するうえで欠くことが出来ないインフラだ」としている。

コメの先物取引とは?

 こうした周辺環境の変化を受けて堂島取引所は23年11月28日に「コメ先物の市場開設に係る有識者会議」を開催して、本上場に向け準備を開始した。年明け早々からどのような商品を上場するのか、コメの生産者や流通業者、商先業者、有識者を委員に指名して具体的な商品設計して、その要点をまとめ臨時株主総会に諮った。

 その商品設計は①現物・先物市場が連携した新しい仕組みの下で受け渡しができる、②上場商品は「日本平均コメ価格」(仮称)、③取引対象商品は国産うるち玄米1等品の全体平均価格、④先物の期限が満了する月は1年先までの各偶数月(10月、12月、2月、4月、6月、8月)、⑤取引単位は1枚当たり3トン(50俵)、⑥最終決済は金銭の授受(先物市場は値決めを行い、現物の受け渡しは指定現物市場を経由して行う)の6点。最大の特徴は特定産地の銘柄米の取引ではなく、日本で生産されるコメの平均価格を「指数」とする形で売買するというものだ。

 これは、試験上場中に行われていた新潟県産コシヒカリや秋田県産あきたこまちといった特定産地銘柄を取引するのではなく、国内で生産されるコメの平均価格という指数を1俵〇〇円といった形で取引するということだ。上場を認めさせるためでもあるが、それ以上に参加者を増やす狙いがある。試験上場の際、商品が新潟コシヒカリなど特定の産地の銘柄米であったことから、他の産地のコメ生産者の関心が薄くなってしまった。

 取引の仕方についても、広く参加者を呼びかける仕組みとなっている。試験上場の時は、最終決済の納会日には売り手は現物を用意し、買い手はその現物を受けなければならず、投資家にとってはハードルが高かった。本上場の仕組みでは、数字上の取引のみで済ますこともでき、金銭の授受で決済を終わらせられるため、投資家も取引に参加しやすい。


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