2024年7月16日(火)

はじめまして、経済学

2024年5月29日

「予算制約」のある中で「効用」を最大化させる

 ここで、私たちの消費行動について取り上げたいと思います。経済学には分かりにくい用語が多くありますが、今から紹介する「効用」(Utility)というのもそのひとつです。端的に言うと、効用とは消費者がモノを買ったり、サービスを受けたりする時の満足感のことを指します。

 そもそも経済学は「人間は効用(満足感)を“最大化”させようとして行動する」という前提に立っています。そして、効用を最大化させるために人間は「選択」(Choice)を行います。つまり消費者は、限られた所得の中で何をどれだけ買えば最も満足できるのかを考えて、選択しながら行動しているということです。

 『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~*3というマンガがあります。これは、月々「2万1000円」のお小遣いで暮らす漫画家・吉本浩二(46歳)の暮らしをドキュメンタリー風に描いた作品です。限られたお小遣いの中で効用を最大化させるため、主人公は一体何におカネを使うのか…?

 このマンガでは、月々2万1000円以下で生活していくための涙ぐましい努力が描かれています。特に「予算制約」がある中では、より安く、より効用の高いものを求めなければなりません。

 日常の様々な場面で、効用を検討しておカネを使う。それは、ある意味で非常に経済学的な行為なのです。

*3 著者・吉本浩二、『モーニング』(講談社)にて連載。限られたお小遣いを通じて、作者自身やその周りの人間を描いたドキュメンタリー風の作品。節約のネタも一般公募されていました。

人間は合理的ではない?

 では、実際のところ、私たちは常に合理的な判断に従って行動を選択していると言えるのでしょうか? ここで、人間の判断に強い影響をもたらすひとつの理論を紹介しましょう。

 最近の経済学では、人間の「心」の動きを重視し、心理学をミックスさせた「行動経済学」(Behavioral Economics)が注目を集めています。

 その中でも有名なものに、「プロスペクト理論」(Prospect Theory)と呼ばれるものがあります。経済学者のダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)と心理学者のエイモス・トベルスキー(Amos Tversky)によって提唱されました。

 たとえば、以下の各質問でそれぞれ2つの選択肢があった場合、あなたならどちらを選ぶでしょうか?

 結論から言うと、質問1でも質問2でも、選択肢A・Bの数学的な期待値*4は変わりません。(質問1ではA・Bともに期待値100万円、質問2ではA・Bともに期待値-100万円)

 それにもかかわらず、質問1では多くの人が選択肢Aを選び、質問2では多くの人が選択肢Bを選ぶというのです。

*4 何か試行を行ったときに予測できる平均値のこと。


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