2024年7月16日(火)

World Energy Watch

2024年5月31日

石炭火力が支える中国の電力需給バランス

 23年の中国の発電量は8兆9091億キロワット時(kWh)、前年比5.2%の伸びとなったが、電源別に見ると火力が6兆2318億kWhで同6.1%の成長で、以下、水力1兆1409億kWhで▲5.6%、原子力4333億kWhで3.7%、そして風力は8090億kWhで12.3%、太陽光は2940億kWhで17.2%の成長であった。

 成長率で見ると確かに風力と太陽光の再エネの伸長は目覚ましい。しかし火力の発電量の伸びも全体を上回っており、構成比を見れば火力が69.9%と圧倒的なシェアを占めている。中国の電力供給の根幹はやはり火力が支えているのは明らかだ。

 風力と太陽光を合わせてもそのシェアは12.4%に過ぎない。そもそも成長率ではなく発電量の増加分で見れば、23年の火力の発電量は3583億kWhの増加であったのに対し、再エネは1317億kWhと火力の3分の1程度に止まる。こんな状況で今年から石炭火力による発電量が減少していくとは一体どのようなシナリオを想定しているのか、理解できない。

 石炭火力と再エネの電力供給システムにおける貢献という点でもう少し掘り下げてみると、23年の発電設備容量の伸びを見ると、風力は前年比20.7%、太陽光に至っては55.2%も容量を拡大した。しかし風力も太陽光も発電能力がこれほど大幅に拡大したにもかかわらず、発電量は上で述べた通り、10%台の増加に過ぎない。

 発電能力の増強に比して発電量の伸びが小さいのは言うまでもなく、再エネの出力が不安定なことに起因している。風力の年間稼働率は25.4%、太陽光は14.7%に過ぎず、稼働していない時間の方が圧倒的に多い再エネが本当に石炭火力に代わって発電量を増やしていくのであれば、火力の何倍もの設備容量を準備する必要があるということになる。

巨額の投資資金を注ぎ込んだ再エネだが……

 それでは再エネの発電設備増強にいかほどの金額が注ぎ込まれてきたのかと言えば、23年の風力と太陽光の発電設備投資は6706億元(約13.4兆円)、発電設備投資額全体の7割にも及ぶ。これほど巨額の資金を投じたリターンが中国全体の発電量からすればわずか1.5%の増加というのはあまりに効率が悪いと言わざるを得ないだろう。

 繰り返しになるが、23年の発電量の増加のうち、その81.4%が火力によるもので再エネは29.9%に過ぎなかった。ちなみに火力の設備投資額は1029億元(約2.1兆円)で再エネの6分の1以下である。

 風力も太陽光も投入後は燃料費が不要であるため、中国では「地域によっては」石炭火力よりも安価なコストで発電できる。その意味するところは、再エネは、設備投資額はかさむし、稼働率も低いが、長期間稼働すれば燃料費節約によって経済性がある場合があるということだ(ただし、電力供給の安定化に必要なコストを加味すれば到底経済性があるとは言えない)。

 しかし依然として5%以上で発電需要が伸びている中国にとって、発電設備投資の7割を振り向けても需要増加分の3割しか満たすことができない再エネに切り替えるということは、長期的に採算が取れるとしても電力供給の安定上、軽々に進めるわけにはいかないのだ。


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