2024年12月16日(月)

令和の日本再生へ 今こそ知りたい平成全史

2024年6月7日

 現在、不登校の約半数が、その理由を「無気力・不安」と答えている。なんとなく行く気にならない、なんとなく教室にいるのが不安という理由で学校に通えなくなっているのである。筆者が取材した多くの教員は、体感的にはこのような子どもが7~8割を占めると語っている。

 こうなった一因には、子どもたちのライフスタイルの変化があるといわれる。都市でも地方でも、昭和と比べて子どもたちが公園や空き地での雑多な人間関係の中で、自由に触れ合う機会が減少した。親の意識は〝放っておいても子どもは育つ〟から〝放っておいたら子どもは何もやらない〟へ変わり、過干渉が強まると同時に親子分離(母子分離)の失敗が目立つようになった。さらにIT機器の普及によって、子どもはスマートフォンを使用しながら育児をされたり、動画視聴やオンラインゲームといった一人遊びに没頭したりするようになる。これによって人間関係の築き方がわからない子どもが増えた。

 プライベートで子どもが人と接する機会が減ったのならば、代わりに保育園や幼稚園がその体験をさせるべきだろう。だが、少子化が進んで子どもの〝奪い合い〟が起き、園の方針は自由な遊びの中で心を育むどころか、独自性を出すために英会話や算数の勉強など小学校の先取り教育を推し進めていった。

 このような状況では、子どもたちが小学生になって教室での人間関係に苦痛を感じるのは必然だ。都内の小学校の校長は言う。

 「今の子は人との接し方を学ばずに大きくなっています。だから、無意識のうちにクラスメイトを傷つけることもあれば、逆に傷つけられることもある。適切なコミュニケーションが取れない子が10人も20人も教室にいれば、そうなるのは当然です。それが彼らにとっては『教室の圧』となって、漠然とした息苦しさや不安から登校をためらうようになってしまうのです」

 このような子どもたちが不登校の理由を言語化できないのは、その理由が自分たち自身にあることを認識できていないからだろう。

SNSを使った攻撃
変わるいじめの〝形〟とは

 子どもたちが無作為にお互いを傷つけている現状を示すのが、学校で増加するいじめの問題だ。

 文部科学省が公表した令和4年度の小中高校と特別支援学校での「いじめの認知件数」は、68万件を超えて過去最多だ。これまで国は「いじめ防止対策推進法」を作り、学校は数多の予防活動を行ってきたのに、なぜこれほどまでに増えるのか。実はいじめの形が大きく変わってきているのだ。

 昭和から平成の初期まで、いじめは多くの場合「大勢で誰かを取り囲んで暴力を振るう」「クラスみんなで誰かを無視する」といった形で行われてきた。そして国や学校のいじめ対策は、こうした行為を防ぐのを目的としていた。「特定の子に対して複数で暴力を振るってはいけない」「誰か一人をのけ者にしてはいけない」といったいじめ指導がそれを物語っている。

 だが、平成の半ばから終わりにかけて、いじめは様変わりした。

※こちらの記事の全文は「Wedge」2024年6月号で見ることができます。

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Wedge 2024年6月号より
平成全史
平成全史

「平成全史」特集後編では、事件、災害、雇用、教育など、主に社会問題について考える。「失われたX年」と、過去の栄光を取り戻そうとするのではなく、令和の時代にどのようなビジョンを描き、実行していくのか?それは、今を生きるわれわれ自身にかかっている。


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