2023年3月14日に厚生労働省自殺対策推進室と警察庁生活安全局生活安全企画課は、「令和4年(2022年)中における自殺の状況」を発表。それによれば、10代の自殺者は、599人 (18年)、 659人 (19年)、 777人 (20年)、 749人 (21年) と増加傾向を示し、22年には796人と800人に達しそうな勢いとなった。
10月20日政府発表の『自殺対策白書』によれば、小中高生の自殺は514人と過去最多であった。22年に亡くなった高校生352人のうち、4分の1は定時制・通信制の生徒で、女子生徒の割合が高かった。原因・動機では、全日制が学業不振やいじめなど「学校問題」の占める割合が大きかった一方、定時制・通信制では「健康問題」が多かった(日本経済新聞 2023年10月20日)。
思春期精神科外来の現状
獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科は、外来初診患者の過半数を20歳未満の患者が占めている。受診の動機は、不登校、朝の体調不良(頭痛、倦怠感、めまいなど)などだが、そのなかに自殺念慮を抱いた生徒も混じって来る。
もっとも、睡眠習慣に介入するだけで適応状況が改善するケースもある。同大学の高橋麻美らが14年から15年にかけて行った調査によれば、初診時に生活習慣指導を行っただけで、73人の不登校小中高生のうち、42人(57.7%)が登校を再開している。
一枚の診断書で学校は動く
しかし、一教師、一心理士の立場では、どうにもできない問題を抱えている生徒もいる。とりわけ、いじめについては、10年前の2013年に「いじめ防止対策推進法」が施行開始されているが、十分生かされているとはいえない。
学校は、生徒や親がいじめ被害を訴えても敏速には動いてくれない。担任教諭、養護教諭、スクールカウンセラーらがいじめに気が付いていることもあるが、強い発言権を与えられているとは限らない。校医も、常時、学校にいるわけではなく、俊敏に対応できるわけではない。