PTA会長を務めて分かったこと
山田 昨年度まで小学校のPTA会長を務めていたのですが、学校と密に接してみて思ったのは、学校の先生方がみな生真面目だということです。裏返して言えば、先生方に対する「縛り」が非常にきつくなっている。全体的に仕事が細かく、しかも厳密になっている印象です。かつて「でもしか先生」なんて先生が存在した時代もあったわけですが、いまやそんな先生は生存できないと思います。
たとえば、PTAで花壇の整備を企画した時のことです。校長先生に許可をもらいに行くと、「ありがたいことですが、アレルギーを起こす花粉を出す花はやめてください。あと、蜂が来ると危険なので、蜂が来ない花を選んでください」と真顔で言うのです。思わず、「蜂が来ない花なんてあるんですか?」と、聞き返したくなりました。
しかし、バカバカしいとは思いつつ、「あなたの独断でやったことで、万が一事故が起こったら責任を取れるんですか」と問われれば、「取れる」とは言えません。万事この調子で、わずかでもリスクのあることは、やらない、やめておこうとなってしまう。これが、私の見た学校現場の現状です。リスクの存在に、とてもナーバスなのです。
また、多くのメディアが伝えている通り、先生たちが時間に追われているのは事実だと思います。いじめ、不登校、感染症への対応もあるし、保護者からの相談やクレームへの対応に長い時間を取られるという話も聞きました。そうした問題に対応するための研修や、教科の研修も多く、「教材研究」、つまり翌日の授業の準備ですね、これをやる時間がほとんどなくなってしまう。授業の質はどうしても下がってしまうわけです。
それを補完しているのが塾、というわけですが、中には「学校は休憩するところ、塾は勉強するところ」なんて公言する子もいるぐらい、本末転倒の状態にあります。しかも、塾に通わせるには大きなお金が必要です。中学受験をする子の場合、小6になると年間で120万円近くもかかってしまう。塾は、教育格差を生む大きな要因のひとつになっていると思います。
小林 公教育、教員の労働問題を長らく放置してきたことが問題です。結果として教員への人気が下がり、優秀な人材がいないばかりか、問題のある人が教員になるということまで起きてしまいます。そうすると、今度は「公立はダメだね」っていう話になって中学受験が加速していく。都内で中学受験をするとトータルで500万円くらいの塾の費用が必要になるという話を聞いたこともあります。本来は公教育というのがきちんと行われるべきなのに悪循環です。