2024年11月22日(金)

世界の記述

2024年6月6日

 「与党には投票したくない」「じゃあ、どこに?」「うーん」――。そんな人が多いのではないか。南アフリカの総選挙は5月29日に投開票され、与党アフリカ民族会議(ANC)が前回5年前の選挙から17%以上も減らし、過半数割れした。

 南ア選管によると、各政党の得票率はANCが40.2%(前回19年、57.5%)、旧白人政権からの流れを組む民主同盟=DAが 21.8%(20.8%)、ジェイコブ・ズマ前大統領率いる新党、民族の槍=MKが14.6%、白人からの土地奪還をうたってきた経済的解放の闘士=EFFが9.5%(10.8%)、古くからあるズールーの政党、インカタ自由党IFPが3.9%(3.4%)で、残り10%の票が全国65におよぶ小政党に流れた。

 ANCが前回19年と比べ17%も票を減らしたのが今選挙の最大の特徴と言える。第2党のDAは海外居住者や、ケープタウンを抱える西ケープ州(得票率53.1%)、都市部の中間層の支持が厚いが、全国レベルでは前回から1%しか増えていない。

 第3党に躍り出たMKは、前大統領ズマがANCのトップでもある現大統領シリル・ラマポーザと敵対し旗揚げした新党だ。ANCに対する「復讐」が奏功したとの見方もある。

 ズマは南ア最大の民族ズールーで、この民族の拠点、東部のクワズールー・ナタール州を見ると、得票率17.6%のANCを大きく引き離し45.9%に達し、州の第1党となった。つまりMKの得票はズールーに偏っている。

 第3党のMKをANCの「分派」とみなせばANCと合わせ得票率は54.8%になる。前回のANCの得票率57.5%から3%弱少ないだけだった。与党が割れ、母体のANCへの支持が激減したとも言える。 

南アフリカの旧黒人居住区ソウェト。ここに住む住民たちは今の南アフリカをどう見ているのか(筆者撮影、以下同)

 アパルトヘイト(人種隔離)で長く異人種を差別してきた白人政権から黒人政権に変わった1994年4月から30年、ANCは強い支持を失い、国を単独で率いることができなくなった。

 南半球の新興国、南アで何が起きているのか。選挙前の3カ月間、現地の旧黒人居住区ソウェトで暮らした筆者がその意味を考えた。(文中敬称略)


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