検査の現状
では、聞こえづらくなった時に補聴器を使用すると、脳はどんな影響を受けるのだろうか。
「補聴器を使用してしっかりと聴覚リハビリテーションを行うと、騒音下におけることばの聞き取りが良くなるというだけでなく、短期記憶や注意力が改善されることがわかっています。ですので、補聴器を正しく使うことは、認知機能を保ったり、認知機能をトレーニングすることにつながります」(小川先生)
とはいえ、聞こえづらさは自分では、なかなか自覚できづらい。
連載第19回で書いた「港区モデル」のように、聴力検査を行う機会をどこかが提供できればいいのだろうが、これまたできづらいのが現状だろう。
令和2年度の厚生労働省・老人保健健康増進等事業として実施された「自治体における難聴⾼齢者の社会参加等に向けた適切な補聴器利用とその効果に関する研究」(PwCコンサルティング合同会社)によると、令和2年度に「聴力検査」を行った自治体は調査回答を得られた940自治体のうち0.4%、「地域の通いの場」等での実施は2.2%だったという。
引用元:『自治体における難聴高齢者の社会参加等に向けた適切な補聴器利用とその効果に関する研究』
「聞こえの確保は要介護状態となる大きなリスクである認知症を予防することから、適切な聴力検診と、聴力の低下が認められた高齢者に対しての補聴器の購入費助成を実施することは健康寿命の延伸のためには実施すべきだと思います。しかし、財政状況や検診を含めた医療提供体制の問題があるので、すべての自治体で実施するのはなかなか難しい面があるとも思います」とは、港区で健診事業を担当しているみなと保健所健康推進課。
では、公的機関などで聴力検査を受けられない場合、私たちはどんなことをどれくらいの頻度で行えばいいのだろうか。
セルフチェックの方法
「聴力は30代から低下し始めますが、30代〜50代で聞こえに不自由を感じる場合は、職場などでも気づきやすいので、特に意識して何かを行わなくてもいいでしょう。アクションを始めてほしいのは60代以降です。60歳になったら、聴力を把握するために、年に一度は耳鼻咽喉科を受診して、聴力検査を行いましょう」(小川先生、以下同)
小川先生には、「聞こえのセルフチェックリスト」を作っていただいたので、ぜひ活用していただきたい。