2024年10月6日(日)

一人暮らし、フリーランス 認知症「2025問題」に向き合う

2024年7月5日

音読の薦め

 さらに、聞こえと脳のトレーニングとして、小川先生が薦めているのが音読だ。

「声に出して読み上げることが、脳のトレーニングになります。音読のスピードは、早ければ早いほど脳は活発に働きます」

「脳トレ」で知られる東北大学・川島隆太先生の研究によると、考え事をしている時や計算をしている時の脳は余り働いていない一方、計算問題を早く解いている時や、音読している時には、活発に働いていたという。

 この話を聞いて思い出したのが、私が岩手出身の友人から聞いた、一人暮らしをしている高齢女性のことである。

 今年96歳になるその女性は、10年以上一人暮らしをしているのだが、友人によるといつも元気で、楽しそうにしているという。そこで、どんな暮らし方をしているのかと聞くと、「一人暮らしだけど、出かけた先では新しく友達を作ろうと心がけていて、毎日日記を書いていて、家ではテレビの問いかけに対して答えて"会話”しているんだって」

 “会話”とはどういうことかというと、例えば天気予報を見ている時に、キャスターが、「明日は暑くなるようです」と言うと、「そうですか、暑くなるんですか。何度くらいになるんでしょうねえ」と画面に向かって聞き返すなどして、テレビと話をしているというのだ。

「どんな場面でも、ひんぱんに声を出すのはとても大事です。音を耳から聞くことで、脳が活性化されますし、喉も鍛えられて、一石二鳥です」と、小川先生。

 小川先生によると、声を出す方法は、音読や会話だけでなく、ひとりごとでもカラオケでも、好きな方法で構わないという。

 一人暮らしでも、声を出す。

 声を出すことで、耳が使われる。

 耳が使われることで、脳が活性化して、認知機能がキープされる。

  どこでどんな暮らし方をしていても、人はいろんな方法を見つけることができるのだなあと力強く思えた。

(続く)

注1)コホート研究とは、「特定の要因」を持つ集団と持たない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる研究のこと。
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