タクシン元首相の野心は、王制を廃止して自らが大統領となってタイを支配することだと言われている。しかし、第2次世界大戦以来、タイの政治経済を牛耳って来た既得権益層は、彼らの権力の源泉である王制を倒そうとするタクシン元首相の脅威よりも民主化を求めるタイの若い世代からの挑戦をより深刻な脅威と捉えているようだ。
タクシン元首相が王制を廃止して大統領(独裁者)になっても、元首相となら何らかの妥協が可能だと考えているのではないか。というのは、タクシン元首相はタイの貧困層をターゲットにばらまき政策を行って来たが、本質的に自分の権力・財産に関心はあっても民主主義には関心がないとみられるからだ。
若い世代の民主化要求に対応するか
この記事によれば近々、前進党は解党を命じられ、ピタ党首は生涯の政治活動禁止が言い渡されそうである。それに抗議するデモが起きる可能性は高いが、過去の民主化デモ同様、鎮圧されるであろう。
しかし、今や既得権益層は学生のみならずより広範囲な若い世代の民主化要求というこれまでにない挑戦に直面している。恐らく、前進党の解党をきっかけに再度、民主化要求デモが起こり、既得権益層は軍を動員して潰すであろうが、今後ともより広範に広がりつつある民主化要求を永遠に潰し続けることは不可能であり、タイは徐々に変化せざるを得なくなるだろう。
そして、地方の貧困層を握るタクシン元首相は、その混乱の中でキャスティング・ボードを握ろうとしているのかも知れない。