2024年7月27日(土)

家庭医の日常

2024年7月27日

緑内障とは

 このように緑内障はけっして稀な疾患とは言えないにも関わらず、日本では適切な情報提供が遅れている。

 インターネットで「緑内障」を検索すると、おびただしい数の製薬会社や診療所・病院のウェブサイトが出てきて、どれを見たら良いか途方に暮れる。全てを確認したわけではないが、日本眼科医会の『緑内障といわれた方へ―日常生活と心構え―』『よくわかる緑内障―診断と治療―』、そして日本眼科学会の『緑内障』のページが参考になるだろう。

 ちなみに、厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」には、「緑内障」についての項目は現時点で見出せなかった。

 緑内障がどのような疾患かの説明には、まず身体の構造と機能についての説明が必要だ。

 眼球内部にはカメラのフイルムに相当する網膜があって、網膜に張り巡らされた網膜神経線維層は網膜の中心に近い部位で視神経乳頭と呼ばれる束を形成して、それが視神経となって脳とつながっている。

 「ものが見える」ということは、外界の情報が光学的に眼球の水晶体(レンズ)を通って網膜に像を結び、その信号を網膜神経線維層が受け取って視神経を通って脳に送られ、脳がその信号を「もの」として認識することなのである。したがって、眼、視神経、頭蓋内のどこに異常があっても「ものが見えない」ことが起こりうる。

 緑内障は、何らかの原因で視神経乳頭と網膜神経線維層が進行性に劣化を起こすことを特徴とする眼疾患である。治療しないと、この神経の劣化により視力喪失につながる可能性がある。

緑内障の分類

 緑内障は、いくつかの種類に分類される。まず、他の眼疾患(ぶどう膜炎など)、手術や外傷、眼以外の疾患(糖尿病、脳疾患など)、薬(ステロイド点眼薬など)の副作用などが原因で発症することがあり、「続発緑内障」と呼ばれる。そうした原因がない緑内障を「原発緑内障」と呼ぶ(念のため、「原発」は原子力発電所のことではない)。

 原発緑内障はさらに、眼の中にある水(房水)の流出路である隅角が解剖学的に広い「原発開放隅角緑内障」と、虹彩の位置異常で隅角が狭くなっていて房水の流出が妨げられている「閉塞隅角緑内障」の 2 つの形態がある。その他、隅角の発育異常によって発症する発達緑内障(先天緑内障)という小児の緑内障もある。

 ここでは、最もよく遭遇するタイプである原発開放隅角緑内障についてお話ししたい。

緑内障の危険因子

 原発開放隅角緑内障を発症する最も重要な危険因子は、眼圧の上昇である。水晶体とその前にある虹彩(カメラの絞りに相当)とに挟まれたスペースの周辺にある毛様体によって生成された房水は、瞳孔を通って虹彩の前方にある角膜までのスペースである前房に流れ込み、前房の周辺である隅角を通って静脈循環へ排出される。房水の生成速度と流出速度のバランスによって眼圧が決まる。

 通常 21 mmHg を超える眼圧を「眼圧亢進」と定義する。眼圧亢進した患者の約10%が5年後に緑内障を発症し、20年後に約30%が発症すると言われている。緑内障の進行リスクは眼圧の上昇度に直接関連している。治療は眼圧を下げることが基本となる。

 一方で、緑内障患者の最大40%は最初の診断時に正常な眼圧を示し、眼圧亢進があっても約5%の人は緑内障になっていないという米国の報告もある。緑内障の病態はまだ部分的にしか解明されていない。


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