2024年11月23日(土)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年8月28日

 青森県が24年7月に発表した報告によると、19~21年度にかけ、合計で184.8トンの未報告があったとされている。違反者は21年度には22人に上った。社長が逮捕された水産会社が漁師から買ったクロマグロは静岡などに流れ「ブリ」「その他鮮魚」として報告され、クロマグロの一部は大阪府内の仲卸業者を通じて大手回転寿司チェーンなどに販売されていたという。

出所:東奥日報2024年7月29日 写真を拡大

漁業法改正も対策は不十分

 この大間の事件を受け、24年6月に漁業法が改正され、現行規定で求められている漁獲量の報告に加え、省令で定める水産資源(30キログラム以上の太平洋クロマグロを想定)については採捕した個体数の報告が義務付けられるとともに、罰則を「6カ月以下の懲役、30万円以下の罰金」から「1年以下の懲役、50万円以下の罰金」に引き上げ、法人重科として1億円以下の罰金刑が新設されている。また、水産物のトレーサビリティを確保するために設けられている水産流通適正化法も改正され、指定された特定の水産資源(30キログラム以上の太平洋クロマグロを想定)に対して、取引時に船舶の名称、個体の重量などの情報伝達が義務付けられた。

 しかし、上記の改正では対策として甚だ不十分である。大型クロマグロを1つでも漁獲すれば多額の収入が見込めることを鑑みると、最大50万円の罰金が抑止力として機能するか疑問だからである。

 また、適用対象と想定されているのは30キログラム以上の大型の太平洋クロマグロにとどまっており、これでは漁獲したマグロを「30キログラム未満」と報告するインセンティブにもなりかねない。何より、上記の法令改正の施行は公布日から2年以内となる26年6月までに行うとされていて、いずれもまだ実施されてはいない。

 不十分な体制に対して、この7月に釧路で開催された会議で欧州連合(EU)がICCATでの大西洋クロマグロの管理措置に倣うかたちで、東太平洋海域に関して包括的な監視取り締まり体制の構築を求める提案を行った。①混獲したクロマグロは例え投棄しても漁獲枠から差し引くこと、②漁獲枠を使い切った後で混獲されたクロマグロは放流するとともにその数を報告すること、③クロマグロは予め指定された十分な監視取り締まり設備を有する港のみに水揚げを限定すること、④水揚げ時に最低5%は検査を実施すること、⑤オブザーバープログラムを構築すること、等がその内容となっている。

 これに対して日本は、各国で実施している監視取り締まり措置をWPCFC事務局に報告し、翌年のWCPFC・IATTC合同作業部会でレビューを行い、具体的な監視取り締まり措置を検討するとの対案を提示、これが合意された。しかし結局のところ合意された内容では、現状の緩い監視取り締まり措置が引き続き実施され続けるだけにとどまっている。

求められる徹底した監視取締体制の構築

 大間の事例は、おそらく「氷山の一角」であろう。筆者自身、定置網にかかってしまったクロマグロを死んだまま投棄した事例などを仄聞することがある。また水産問題に詳しい元日本経済新聞編集委員でジャーナリストの樫原弘志氏は「大中型まき網漁業によるクロマグロ漁獲のごまかしが疑われる」とも指摘している。

 ここで必要なのは、他のマグロを管理する国際的な漁業管理機関などでも取り入れられている徹底した監視取り締まり体制の早急な構築である。特に、大型でクロマグロの漁獲の半数近くを占める巻網漁船に対するオブザーバー乗船は喫緊の課題である。

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