これはSFではない!
以前「ネットフリックス」の番組で、脳の意識をデジタル化することで、色々な体に乗り移ることができるというSFを見たことがある。意識をアップロードすることができれば、体は滅んでも生き続けることができる。そのようなことを本気でやろうとしている研究者がいると知って驚いた。しかも、方法論としてはもはや完成しているように読めた。これまでの研究で人間の脳を左右に切り離すと、2つの意識が現れることが分かっているそうだ。そこで、脳の半分を機械でつくった脳とつなげることで、意識を移し替えることができるというものだ。不老不死への挑戦が始まろうとしている。
金継ぎの器
イギリス軍兵士としてアフガニスタンに従軍した際、即席爆発装置(IED)を踏んで両足を失った筆者。しかし、憐みの声をかけてくれる人には怒りを感じた。「身体が損なわれたとしても、人間はそれに適応することができるはず」という思いで筆者自身、義足での生活に慣れるように努力し、障害をサポートする医療技術の現場を訪ねていく。そんな筆者が日本の技術である「金継ぎ」の器を最終章で紹介し、自分の姿と重ねる場面は感動的だ。
忘れることは必要不可欠
「物忘れ防止の方法」──。このようなタイトルがつけられた書籍や記事は後を絶たない。本書では、そんな様々な情報とは一線を画し、「忘却」が持つプラス面について書かれている。脳には記憶を忘れる仕組みがあり、それは流動的なこの世界にとっては好都合である。感情の忘却は、私たちを苦痛や憤りのような負の感情から解き放ち、また、適度に忘れて記憶間の結びつきを緩くすることは、創造性にも関連してくるからだ。「忘却」の思わぬ大切さに触れられる書籍だ。