2024年10月12日(土)

Wedge REPORT

2024年10月12日

 東海道新幹線は2024年10月に開業60周年を迎えた。鉄道は都市間の人やモノをつなぐインフラとして、日本の生活や経済を支えてきた。その裏には様々な技術や工夫がなされていて、海外輸出など国際貢献もなされている。鉄道をテーマにした記事6本を編集部が厳選してお届けします。

(vichie81/gettyimages)

<目次>

1:〈意外と知られていない鉄道貨物の世界〉「物流2024年問題」へどう寄与するか、鉄道輸送の実態と位置づけ(2024年8月7日)
田阪幹雄( NX総合研究所リサーチフェロー)

2:インドネシアの全方位外交とプライドに乗じる習近平 恩恵としての一帯一路とその限界(上)(2023年11月1日)
平野 聡( 東京大学大学院法学政治学研究科教授)

3:「台湾人アイデンティティ」が走らせた新幹線 NHK「路(ルウ)―台湾エクスプレス」は日台俳優陣共演の傑作(2020年6月11日)
田部康喜( コラムニスト)

4:〈東京メトロ上場へ〉なぜ、今やっと行うのか、遠のいた都営との一元化の行方は?
(2024年10月3日)
青山 佾( 明治大学名誉教授)

5:<東海道新幹線60周年記念>あなたはいくつ答えられるか?”特選”東海道新幹線クイズ(前編)(2024年10月1日)

6:【新幹線の”道”を支える匠の技】職人の五感のセンサー、ミリ単位のレール異変も見逃さないプロ集団(2024年8月31日)
大坂直樹( 経済ジャーナリスト)

1:〈意外と知られていない鉄道貨物の世界〉「物流2024年問題」へどう寄与するか、鉄道輸送の実態と位置づけ(2024年8月7日)

 前々回の「【日本物流における内航海運の位置づけ】2024年問題の解決へどれだけ寄与するか、データで徹底検証」で、筆者はトラック輸送から内航海運へのモーダルシフトが「2024年問題」の解決にどれだけ寄与するかをデータで検証した。それを踏まえて前回「【日本の高速道路は物流に不向き?】物流「2024年問題」に内航海運へのモーダルシフトが必要な理由」で、日本の内航海運事業が中長期的に進むべき方向性について述べた。

 そこで今回と次回の2回にわたって、トラック輸送からのモーダルシフトのもう一方の担い手として想定されている鉄道輸送について述べたい。

鉄道輸送は「物流2024年問題」に寄与できるのか(Smederevac/gettyimages)

 まず今回は、日本の物流における鉄道貨物輸送、特にコンテナ輸送の実態を、できるかぎり数字で捉えて述べていく。

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2:インドネシアの全方位外交とプライドに乗じる習近平 恩恵としての一帯一路とその限界(上)(2023年11月1日)

 インドネシアのジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道を、日本主導で建設する動きが進んでいたかに見えた2015年、中国主導案が急浮上し、8月にはジャカルタにて「中国高速鉄道展」が開催された。当時現地を訪れていた筆者も参観したところ、賑わう会場には所狭しと中国高速鉄道の模型が並べられ、中国「国産」技術が07年の開業から僅か数年間で如何に進歩したかを強調していた。

ジャカルタのスナヤン・シティで開催された中国高速鉄道展(2015年8月、以下筆者撮影)

 そこで筆者は「遺憾ながら日本案は通らない」と直感した。2010年代に入り、インドネシアが経済成長を続け、急速に台頭した中間層が新しいライフスタイルを手に入れる中、この展示は彼らに「中国との関係を深めればこれだけのものが簡単に手に入る」ことを明快に示したからである。しかも中国は当初、インドネシア政府による債務保証を不要とする態度をとった。また中国案は費用削減のため、ジャカルタ・バンドン双方の起点を中心部から離れた場所とし、新都市開発との相乗効果をアピールした。

 インドネシア側には、単に高速鉄道を建設するだけでなく、こうした全体的な安さ・早さ・新しさの印象が魅力と映り、日本案はいくら堅実であっても最終的な訴求力を欠いたことは否めない。

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3:「台湾人アイデンティティ」が走らせた新幹線 NHK「路(ルウ)―台湾エクスプレス」は日台俳優陣共演の傑作(2020年6月11日)

(Sean Pavone / gettyimages)

 NHK「路(ルウ)―台湾エクスプレス」(5月16日スタート全3回)は、台湾新幹線の開業に向けた国際的なコンソーシアムに加わった、日本チームの奮闘を描きながら、「台湾オリジナル」を追及する「台湾人アイデンティティ」を強く感じさせる傑作である。台湾の公共放送局との共同制作となって、台北や高雄などの舞台のロケが素晴らしい。

 原作は『悪人』などで知られる、吉田修一の『路』。脚本はヒロインのドラマを描かせては第一人者ともいえる、田渕久美子である。日本チームに加わった商社出身の多田春香役に波瑠を配して、台湾の俳優・歌手のアーロンが演じる、劉人豪(エリック)とのロマンスも絡めて見事な構成になっている。

 春香(波瑠)は、池上繁之(大東俊介)から求婚されていた。台湾新幹線が開業するまで待ってくれるように頼んで訪台する。いったんは、婚約指輪を受け取る。しかし、学生時代の台湾旅行で知り合った、エリックのことが忘れられない。別れ際にエリックから連絡先の電話番号を書いた紙を受け取りながら、失くしてしまい再会はかなわなかった。日本チームの拠点オフィスの台湾人女性スタッフがエリックのメールアドレスを探し出してくれて、ふたりは再会する。

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4:〈東京メトロ上場へ〉なぜ、今やっと行うのか、遠のいた都営との一元化の行方は?(2024年10月3日)

 国と都が10月23日に東京メトロ株を上場し、両者が保有する株式の50%を放出する。2002年に成立した東京地下鉄株式会社法は「できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずる」と完全民営化を定めているが、20年以上を経て今回ようやく50%の株式を売却することになった。

株式50%の上場を決めた東京メトロ。何が変わるのか(Sergio Delle Vedove/gettyimages)

 ここまで時間がかかったのは、都がメトロを所有し、後発の都営地下鉄を一体化させたかったためだ。今回の上場で、都営とメトロの合併はさらに遠のいた。これは利用者にとって歓迎すべき結果と言える。

パリやニューヨークと異なる発展を遂げた東京の地下鉄

 大正時代にできた日本で初めての地下鉄(銀座線)は、東京地下鉄道株式会社と東京高速鉄道株式会社によって民営で建設・運行されていた。ところが1930年代の世界的大不況の中で経営難に陥り、政府によって1941年、帝都高速度交通営団(通称営団地下鉄)が設立され、経営を引き継いだ。

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5:<東海道新幹線60周年記念>あなたはいくつ答えられるか?”特選”東海道新幹線クイズ(前編)(2024年10月1日)

Q1:N700Aのパンタグラフ両脇の壁は何のため?

『東海道新幹線クイズ100より』以下同

架線から電気を受けとるのがパンタグラフ。N700Aのパンタグラフの両脇には、大きな壁のようなものがあります。これには、どんな役割があるのでしょうか?

①高速でパンタグラフに当たった雨が飛び散るのを防ぐ

②汚れやすいパンタグラフの目かくし

③沿線への騒音を防ぐ

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6:【新幹線の”道”を支える匠の技】職人の五感のセンサー、ミリ単位のレール異変も見逃さないプロ集団(2024年8月31日)

 深夜の東京駅八重洲口。宵の口に煌々と灯っていた高層ビル群の窓の明かりも日付が変わる頃にはほとんどが消え、行き交う人や車も少ない。だが、東京駅だけは眠らない。

保院司さん(写真左)と保坂祐太さん(写真右)。手前に写る装置で軌道の状態を総合的に検測する。2人越しに見える新幹線は、彼らが仕上げた〝道〟の上を走っているのだ(写真・中村 治 以下同)

 夜間にしかできない仕事がある。東海道新幹線にとって、営業運転を終えた午前0時から始発列車が走り出す午前6時までは保線作業に欠かせない時間帯だ。線路や設備を念入りに整備して、翌日の営業運転につなげる。

 午前1時半、東京駅近くの工事用通用口から線路内に入った。線路上を東京駅に向かって歩くと、脚立に上り高い位置で架線の保守工事を行っている作業員たちが見えた。駅のホームは昼間のように明るく照らされ、やはり何人もの作業員がせわしなく働いていた。深夜の東京駅では線路以外にも架線工事や駅ホームの工事などさまざまな作業が行われている。

 線路上には、巻き尺を使ってレールの長さを測っている一団がいた。50メートルほどあるレールの長さを測り終えると、今度は向きを変えて同じレールの長さを測る。さらに別の人が同じ作業を行う。この作業は人や向きを変えて何度も繰り返された。その後は特殊な機械を使ってレールの高低、軌間、ゆがみなどの状態を確認する。測定したデータはリアルタイムで無線接続されたタブレットPCに保存される。

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