Telegramは、13年にロシア最大手のSNSであるフコンタクテの創業者であるニコライ・ドゥーロフとパベル・ドゥーロフの兄弟が立ち上げたサービスで、アプリを運営するTelegram Messenger LLPはドイツに拠点を置く独立系非営利企業である。現在ドゥーロフ兄弟は、アラブ首長国連邦(UAE)の首都ドバイで暮らしており、UAEとフランスの市民権を持っているが、ロシア政府は今でもドゥーロフ兄弟をロシア国民とみなしており、在フランスのロシア大使館は「拘束の理由の明確化、ドゥーロフ氏の権利の保護、領事による接触」を求めているという。
犯罪組織がSignalの利用にシフトしているとして、Signalも同じように摘発されるのであろうか。それは無いように思う。
なぜならSignalは米国の暗号ソフト開発者であるモクシー・マーリンスパイク氏によって開発され「オープン・ウィスパー・システムズ」という非営利団体によって維持されており、情報源の秘密を死守しなければならないプライバシー保護やセキュリティに関心が高い多くのジャーナリストや政治家に利用されているからである。
有名どころとしては米国防総省の国家機密情報を流出させたエドワード・スノーデン氏や次期トランプ政権で新設される政府効率化省(DOGE: Department of Government Efficiency)のトップに就くといわれているイーロン・マスク氏が利用者であるといわれている。米大統領となるトランプ氏もマスク氏の助言を受けてSignalユーザーになることは明らかだ。
TelegramやSignalを禁止している国
TelegramやSignalは世界中どこでも使えるわけではない。中国やイランでは使用が禁止されている。中国では、政府が国民のコミュニケーションを監視できないことを懸念しており、WeChatなどの政府が容易に監視できるアプリが奨励されている。
先頃、イスラエル軍のレバンノン首都空爆によって殺害されたヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララ師が、イスラエルの盗聴を恐れ、ヒズボラの工作員をはじめ一般市民にも携帯電話の使用を禁じ、ポケベルやトランシーバーの使用を求めた結果、イスラエルの諜報機関モサドによって仕掛けられたポケベル爆弾は、多くの被害を出した。ナスララ師がもう少しTIに詳しく、Signalを知っていたなら今回の悲劇は起こらなかったように思う。
Signalのダウンロード数は、まだ4%(2022年Tech Report)に過ぎないが、今後、その強力なプライバシーの秘匿性が評価され、認知度が上がるにつれユーザー数は急拡大していくものと思われる。