Telegram創業者逮捕の是非
今年8月24日にTelegramの創業者で最高経営責任者(CEO)のパベル・ドゥーロフ氏が、プライベートジェットでパリ郊外のルブルジェ空港に現れたところで、フランス警察の手によって逮捕されている。ドゥーロフ氏の逮捕容疑は、Telegramが犯罪の連絡手段として用いられているのもかかわらず、運営者として監視や管理を怠ったのなどの容疑とされている。
詐欺や麻薬密売、マネーロンダリング(資金洗浄)児童ポルノの流布などの犯罪に関連する捜査に協力しなかったことから「共犯者」に当たると見られているという。
Telegram創業者の逮捕は、2004年にWinnyの開発者で当時東京大学大学院情報理工学系研究助手をしていた金子勇氏が、著作権侵害行為を幇助した共犯容疑で京都府警に逮捕された事件を思い起こさせる。
Winnyとは、不特定多数の端末同士がサーバーを介さずに文書や画像など交換できるP2Pファイル交換ソフトの一種で、日本人が開発した画期的なソフトであったが、このソフトを用いて著作権が設定されている音楽や映像、児童ポルノなどが流通することになり、社会問題化していた。
テレグラムは声明で、「プラットフォームの悪用について、プラットフォームやその所有者に責任があると主張するのは、ばかげている」としているが、同じことがWinnyの訴訟でも争われている。
政治的意図や世論の動向にそって適切な根拠を欠いたままに行われる国策捜査であるとの意見が多い中、06年12月13日に第一審の京都地裁が罰金150万円の有罪判決を出したが、09年10月8日に大阪高裁が「悪用される可能性を認識しているだけでは、幇助罪には足らず、専ら著作権侵害に使わせるよう提供したとは認められない」として京都地裁の判決を破棄し、金子氏に無罪を言い渡している。
大阪高等検察庁は判決を不服として最高裁に上告したが、11年12月9日に最高裁が上告を棄却し、金子氏の無罪が確定している。
容認されるSignal
Telegramはメッセージングサービスの運営も行っており、金子氏は単にソフトを開発したに過ぎないので、この2つを同列に扱うのは極論かも知れないが、仮にTelegramを摘発したところでSignalのように新しいメッセージングサービスは、次から次に出てくる。当局の要請に従わないという理由で、創業者を逮捕するというのは、やはり、やり過ぎといわざるを得ない。大半の利用者は、犯罪に利用しているわけではないのだから。
また、今回の摘発はTelegramがロシア発祥のものであることも一因のように思う。