2025年3月4日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年1月29日

 欧州が衰退することは米国の利益にはならない。現状変更を目指す枢軸が徘徊する中、トランプ政権としては助力を必要としている。米国が目指すべきは欧州の再興であり、欧州の滅亡を喜ぶことではないはずだ。

 欧州は歴史上の王座の地位から退位している。トランプ政権は、欧州諸国に欠けている戦略的明晰さを持っている日本のようなパートナーと協働すべきだ。

 イスラエル、インド、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアのような国は、欧州諸国よりも、正確に時流の兆候を読み取っている。将来の米国の外交にとって、アルゼンチン、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイの方が、欧州諸国よりも重要であろう。

 欧州はもはや米国の外交政策の中心には位置していない。欧州の奇跡的な回復がなければ、将来の米国の大統領も、ポスト欧州の世界での政策を形作る上で、トランプ大統領と同様の方向性を取っていくだろう。

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欧州の評価を下げる3つの要因

 上記は、トランプ第二期政権を前に、米国外交の泰斗のミードが欧州の衰退について論じたものである。米国として、「現状変更を目指す枢軸」(ロシア、中国、イラン、北朝鮮が念頭にあるのだろう)の挑戦に対処する頼りになるパートナーを考える際、欧州の位置づけを厳しく評価しつつ、その理由を説明している。

 「ポスト欧州の時代」と言うが、それは第一次世界大戦の終結以来、繰り返し言われてきたことである。また、この論説で指摘される欧州についての見方は、欧州の読者にとっては厳しすぎると感じられる。一方、ミードが今回、「ポスト欧州の時代」として欧州を厳しく評価する背景を考えてみると、幾つか指摘できる。

 第一に、米国の関心の重点が、国としては中国、地域としてはアジア太平洋にはっきりとシフトしていることが挙げられよう。ミードがこの論説で、協働すべきパートナーとして、日本、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイを挙げているのは、そうした問題意識の反映であろう。


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