宝に化けた規格外の大根
東京・羽村市を拠点にスーパーマーケットやレストランなどを営む「福島屋」は、無添加など安全・安心やおいしさ、生産者の顔が見える食品などをコンセプトに、他店では容易に得られない本物を扱う。240坪の本店には、選び抜かれた約6000商品が並ぶ。
「私たちは、まっとうな日々の食事のあり方を伝えていく食のセレクトマーケットです」と語るのは、長年、全国の産地へ足を運び、生産者と生活者、そして販売者の全てに有益な食を追求する店主の福島徹さん。その商いのあり方を「三位一体」と表現する。
かつて、青森で大根を自然栽培する農家を訪れたときのこと。清らかな雪解け水をたっぷり吸った上質な大根に惚れた福島さんは、たびたび通うようになる。そして生産者と商売の売り買いを超えた関係性を築いていった。
福島さんが初めて出会った頃は、4万本の収穫のうち1万本が多少の傷やサイズの不揃い、見栄えが悪いといった理由で出荷できず、大半は価値を生まなかった。それを目の当たりにした福島さんは、その規格外品を使って切り干し大根をつくることを勧めた。
それまで家庭用の道具でほそぼそとつくっていたが、福島さんは設備投資を提案して機械を購入し、自然栽培の安全・安心な切り干し大根へと生まれ変わらせた。作付けは10万本に増え、切り干し大根は従来の200倍もの量が出荷・販売されるようになった。
もし、福島さんが生産地という現場を訪れず、出荷できない規格外品という現物を見ず、家庭用の道具でほそぼそとつくる現実を知らなければ、宝物は得られなかっただろう。これが、こたつを出て、足を運ぶことを勧める理由である。
お客様との心の交流であり
人と人との付き合いである
現場・現物・現実から始めよう