2025年2月7日(金)

商いのレッスン

2025年2月1日

宝に化けた規格外の大根

 東京・羽村市を拠点にスーパーマーケットやレストランなどを営む「福島屋」は、無添加など安全・安心やおいしさ、生産者の顔が見える食品などをコンセプトに、他店では容易に得られない本物を扱う。240坪の本店には、選び抜かれた約6000商品が並ぶ。

 「私たちは、まっとうな日々の食事のあり方を伝えていく食のセレクトマーケットです」と語るのは、長年、全国の産地へ足を運び、生産者と生活者、そして販売者の全てに有益な食を追求する店主の福島徹さん。その商いのあり方を「三位一体」と表現する。

 かつて、青森で大根を自然栽培する農家を訪れたときのこと。清らかな雪解け水をたっぷり吸った上質な大根に惚れた福島さんは、たびたび通うようになる。そして生産者と商売の売り買いを超えた関係性を築いていった。

 福島さんが初めて出会った頃は、4万本の収穫のうち1万本が多少の傷やサイズの不揃い、見栄えが悪いといった理由で出荷できず、大半は価値を生まなかった。それを目の当たりにした福島さんは、その規格外品を使って切り干し大根をつくることを勧めた。

 それまで家庭用の道具でほそぼそとつくっていたが、福島さんは設備投資を提案して機械を購入し、自然栽培の安全・安心な切り干し大根へと生まれ変わらせた。作付けは10万本に増え、切り干し大根は従来の200倍もの量が出荷・販売されるようになった。

 もし、福島さんが生産地という現場を訪れず、出荷できない規格外品という現物を見ず、家庭用の道具でほそぼそとつくる現実を知らなければ、宝物は得られなかっただろう。これが、こたつを出て、足を運ぶことを勧める理由である。

売るという​ことは
お客様との心の交流であり
人と人との付き合いである
現場・現物・現実から始めよう
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Wedge 2025年2月号より
災害大国を生きる 積み残された日本の宿題
災害大国を生きる 積み残された日本の宿題

「こういう運命だったと思うしかない」輪島市町野町に住んでいた小池宏さん(70歳)は小誌の取材にこう答えた。1月の地震で自宅は全壊。9月の豪雨災害時は自宅周辺一帯が湖のようになったという。能登半島地震から1年。現地では今もなお、土砂崩れによって山肌が見えたままの箇所があったほか、瓦礫で塞がれた道路や倒壊した家屋も多数残っていた。日本は今年で発災から30年を迎える阪神・淡路大震災や東日本大震災など、これまで幾多の自然災害を経験し、様々な教訓を得てきた。にもかかわらず、被災地では「繰り返される光景」がある。能登の現在地を記録するとともに、本格的な人口減少時代を迎える中、災害大国・日本の震災復興に必要な視点、改善すべき方向性を提示したい。


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