キンボール会長はさらに次の通り述べた。「ロシアと米国との核戦力の上限を現状のままとし、あるいは低く設定することは、トランプにとって、中国の核戦力を抑えるための外交上の梃となる。トランプ大統領がこの難局に立ち向かい、ロシア、そして中国との意味ある核軍備管理・軍縮交渉につなげていくよう期待したい」
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トランプの核への関心の変化
上記は、トランプ大統領がロシア、中国との核軍縮に意欲を示したことを、米国のACAが評価したものである。ACA は、軍備管理・軍縮、不拡散問題のNGOで、核抑止の強化よりは核リスクの低減を重視する。(なお、トランプが言及した「非核化」とは通常の表現で言えば「核軍縮」のことであろう。)
トランプが就任早々、核軍縮への意欲を示したのは意外だった。第一期トランプ政権は、ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の延長が論点となった際、中国も交えた軍縮枠組みの必要性を述べていたが、同政権は核軍縮に熱心な政権ではなかった。
第一期トランプ政権の18 年版 NPR(核態勢見直し) は、核兵器の役割の拡張を図るものだった。第一期政権のトランプ自身の核兵器への関心は必ずしも明確なものではなかったが、彼は、強大な核戦力は米国の力の源泉であり、自身の力の源泉と見ていた。また、金正恩との首脳会談を進めたのは、北朝鮮の非核化に向けての意欲というよりは、世間の注目、評価を得るためと見られた。
では、第二期政権開始における核軍縮への関心をどう捉えるべきか。この ACA のコメントにあるように、前向きな兆候として見ることもできる。核による緊張が高まるよりは緩和する方が望ましい。
ロシアとは2026 年2月に失効する新 START の措置を延長し、中国とも核軍備管理の措置について交渉を開始すれば、世界の雰囲気も変わってくる。ロシアも中国も国内に様々な問題を抱えていることを考えれば、米国との関係が悪化することは避けたいだろうから、可能性はある。