2025年3月17日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月13日

三者協議に立ちはだかる壁

 一方、不安の要素もある。トランプが「注目、評価」を得るため、中途半端な取引をしてしまうことである。第一期政権における金正恩とのやりとりを考えれば、そうしたリスクを考えないわけにはいかない。

 ロシア、中国との間で「核兵器に莫大な資金が費やされている」「核兵器の削減が望ましい」という一般論に異論が出ないとしても、それを具体的なコミットメントに結びつけるのは容易なことではない。米露間においては、この ACA のコメントにあるように、現行の新 START の措置(双方共に戦略核弾頭を 1550 までとする)を単純延長することが一案となる。一方、米国から見れば、中国が急速に核戦力を増強しつつある中、「米露同等」では中露という二大核大国に対応するには不十分という見方が核専門家の間の多数意見となっている。

 また、米中においては、どのような数でピン留めするのか。中国は米国よりも少ない数を受け入れることはできるのか。そもそも、中国は、軍備管理・軍縮の前提となる検証・透明性の措置を受け入れることができるのかも問題となる。

 さらに、米国、ロシア、中国という三者間でどのような取引を考えるのか。米国対中露同等では、ロシアも中国も乗ってこない。米露中の三者同等であれば、著しく米国に不利となる。

 論理的な選択として「米5、露3、中3」という考えもあるが、ロシアも中国も対米6割では収まらないだろう。三者間の交渉、特に、その内の二者が「限界のない友好関係」を標榜している中、それを成立させるのは至難の業である。

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