2025年4月11日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2025年2月28日

「漁獲枠削減」が意味なさない現状 

 日本人にとって身近な存在であるマサバ。そのマサバは、資源上2つの系統に分かれています。一つは太平洋で漁獲される太平洋系群で最も漁獲量が多い資源です。もう一つは、日本海~東シナ海にかけて漁獲される対馬暖流系群です。なお本文では、漁獲枠を国が定めるTAC(Total Allowable Catch=漁獲可能量)と同じ意味で記載しています。

 マサバの漁獲枠削減が報道されているのは、太平洋側で獲れるマサバ資源のことです。8割減というのは大きな数字です。しかしながら、もともとのマサバの資源量の評価が大きく、設定されていた漁獲枠が大きすぎて枠に対して漁獲量が大幅に少ないことが続いていたという面があります。

 例えば2023年度のTACに対する漁獲実績はスルメイカもサンマも約2割です。TACを8割減らしても、これまで通りに漁獲できるということです。その間に資源量が減り漁獲量が減って行けばさらに形式的な内容になってしまいます。まさに「いたちごっこ」なのです。

 それなのに報道では、「漁獲枠〇割削減!過去最低の漁獲枠!」となります。しかしながら、資源管理に影響もなく、ただ資源が凸凹を続けながら減り続けるだけなのです。

 筆者は20年以上漁獲枠とにらめっこして、北欧などの最前線で買付をして日本向けに輸出してきました。獲り切れない漁獲枠は、乱獲につながってしまいます。何十年も北欧漁業の成功事例を見てきた立場からすると、100%失敗する漁獲枠の運用なのです。

 漁獲枠の大きな削減以前に、資源量の実態に合った漁獲枠でなかったことが、本質的な問題でした。そのため、幼魚に至るまで過剰な漁獲が進み、サバが激減してしまったのに他なりません。

漁獲枠が大きすぎるとどうなるのか?

 サバの漁獲枠に限らず、実際の資源量が少ないのに獲り切れない漁獲枠が設定されてしまうとどうなるのか?

 漁業者の仕事は魚を獲ることです。資源が減って漁獲量が減ると供給量の減少に伴い単価が上昇します。本来はこの時点で、資源回復のため獲り過ぎないように漁獲量が制限されることが必要になります。

 その際に漁獲枠が乱獲を防ぐ効果を発揮します。漁獲枠により、実際に漁獲できる量より少ない漁獲量に制限されれば、漁業者としては、価値が高い時期に価値が高い大きな魚を狙うようになります。価値が低い小さな魚は経済的にも資源的にも漁獲するのは良くないので自ら避ける努力をするようになります。ノルウェーでのサバ漁をはじめ、漁業を成長産業にしている北米・北欧・オセアニアなどの国々は、科学的根拠に基づく漁獲枠の設定で大成功しています。

 一方で、日本の場合は漁獲枠が大きすぎるのが大問題です。漁獲枠が大きければこれまで通り漁獲ができますし、資源が減って魚が小さくなっていても魚価が上がっていますので、成長乱獲を起こしてしまう小さな魚でもできるだけ獲って水揚金額を上げようとします。なおこれは漁業者ではなく、資源管理制度の不備による問題です。


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