課題を乗り越えるために
これまで、子どもの自殺の実態把握が進んでいない現状と、その理由を述べてきた。対策は次の3点である。
第1に、分析対象となる子どもの自殺に関する基礎データを収集するための調査票を設計することである。審議会のメンバーには医師や臨床心理士、学校関係者などの現場の人間が中心になっている。社会調査の技術をもつ専門家の参画を求めるべきだろう。
第2に、警察庁の自殺統計のように個人や組織を特定しない形で情報が収取できる仕組みをつくること。こども家庭庁と文科省を中心にルールを整備し、警察庁や消防庁も巻き込んでいくのがよい。
第3に、担当する専門部署に権限と人員を集中して政策立案ができる体制を整えることである。現状の体制では限界があることは、いうまでもない。
幸いなことに、日本では、「大人の自殺率を減らしてきた」という政策上の実績がある。その成果はもっと強調されてよい。大人でできたことが、子どもにできないはずはない。そのためには、何が必要なのだろうか。
清水さんは、学校だけでも家庭だけでもない、地域の人たちも入って、子どもたちを支えるしくみをつくっていくことが求められているという。
「身近にそういう子どもがいないとしても、社会をつくっているのは大人なのですから、大人の責任としてやっていかなければならない。生きられなくなっている子どもの要因を把握して改善していくことは、だれにとっても心地のよい社会になるはずです」