2025年3月31日(月)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年3月24日

数字は怪しい

 まず、軍事費が過少に、実質GDPが過大に推計されている可能性がある。実質GDPとは名目GDPをインフレ指数(GDPデフレータ)で割ったものだから、インフレ率を誤魔化せばいくらでも大きくできる。特にインフレ率が高い時にはそうだ。

 図2は消費者物価指数、GDPデフレータ、為替レート、消費者物価上昇率、失業率を書いたものだ。消費者物価指数とGDPデフレータは同じような動きをしている。

 そこでGDPデフレータを人々の生活に直接関係する消費者物価指数と同じと考えても良い。21年から24年にかけてGDPデフレータは36.1%、実質GDPは6.1%上昇しているが、GDPデフレータが実は6.1%高い42.2%に上がっていたのかもしれない。すると実質GDPの増加率はゼロで、経済は成長していないのかもしれない。軍事費の負担もある訳だから、人々の生活水準は低下しているのかもしれない。

 そういうことは十分あることだが、人々の不満を押さえているのは、もちろん、プーチンの国民を弾圧する力だが、失業率の低下も役立っているだろう。失業率は21年の4.8%から24年の2.6%にまで2.2%ポイントも低下している。すなわち、生活水準は低下しているかもしれないが、仕事はあるという状況だ。なお、為替レートは下落しているが、侵攻前と比べて16%下落しているにすぎず、暴落というほどのものでもない。

 なぜ失業率が低下しているのかと言えば、戦争のために人々を戦場に駆り出し、同時に兵器製造のために人を雇っているからだ。もちろん、そうすれば、政府赤字が増える。

 図3は、政府支出と政府収入とその差額の財政赤字を示したものだ。ところが、図に見るように、23年の財政赤字は対GDP比で2.3%でしかない。コロナショック対応での赤字拡大の4.0%よりも小さい。ロシアは、コロナ対応程度の政府赤字でウクライナ侵攻を続けている訳だ。


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