2025年4月1日(火)

World Energy Watch

2025年3月26日

 25年1月、2月のEVの販売実績では、中国での販売増は続き、米国でも販売は堅調に伸びている。24年は成長がなかった欧州市場でもEVの売れ行きは回復してきている。

 中国では例年1月、2月の新車販売台数は春節の影響があり少なくなるが、今年の中国のEVの販売台数は、前年比40%増の140万台。欧州、米国でもEVは台数を伸ばしており、EV調査会社のロー・モーションは1月と2月の全世界の販売台数を240万台と発表した。年間を通しての販売台数は2000万台を超えると予測している。

 米国の販売増の背景には、トランプ大統領によるEVの購入補助金廃止の実施前に購入する駆け込み需要もあったとみられるが、肝心のテスラは駆け込みの対象にあまりならなかったようで、販売台数を落としている。

テスラ車は世界中で売れなくなっている

 テスラは販売の伸びに合わせ拡張を続け、今米国カリフォルニア州、テキサス州、中国上海、ドイツベルリンに組み立て工場を持つ。テスラ車の販売は伸び続けていたが、昨年初めて販売台数が前年を下回った(図-2)。20年にマスクが掲げた30年までに、世界最大のトヨタの販売台数の2倍の年間2000万台の販売目標も、昨年半ばに降ろされた。

 昨年の主要市場でのテスラの販売台数とシェアは表-1の通りだが、今年になり全ての市場が伸びる中で、テスラは販売台数とシェアを落としている。

 最大市場の中国の2月のテスラの販売実績は、前年同月比11%減の2万6777台。シェアは前年同月の7.5%から3.8%に下落した。

 欧州では、乗用車販売に占めるEV比率が95%になったノルウェーで、テスラ車の1月、2月の販売は前年同月比44.4%減。ドイツでは70.6%減となった。欧州全体では、前年比半減した。米国の1月実績では前年同月比11%減となった。

 テスラの販売不振には、複合的な原因があるとみられている。もっとも売れているテスラYがモデルチェンジ時期に差し掛かっていることと、価格競争力のある中国製EVとの競合が増していることに加え、マスクへの反感の高まりもある。

EV好きはマスクが嫌い

 販売が落ち込むテスラだが、そう仕向けたのはマスク自身だ。米国では共和党と民主党支持者のEVに対する好感度には大きな差がある(【EV嫌いからEV好きに?】トランプの鼻息は荒くも強い市場の力、民主党と共和党のエネルギー政策をどう見るか Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン))。

 マスクがDOGEを率いた後のテスラのイメージに関する調査では、保守層の35%がテスラのイメージが上向いたと答えたが、リベラル層では下がり53%となった。だが、もともと保守層ではEVへの関心が薄い(図-3)。マスクが共和党に近づいた結果、獲得よりも失った消費者の方が多かった。

 同じことは、ドイツでも起きている。マスクは、ドイツでは右翼と呼ばれるドイツのための選択肢(AfD)を支持した。AfDは温暖化対策に反対している政党だ。その支持者は旧東ドイツに多い。2月23日の総選挙の結果を見ると、東西ドイツが支持政党により分断されている様子が分かる。

 AfD支持者は温暖化に関心がないことに加えて、旧東ドイツの所得はドイツの中では相対的に低いこともあり、EV購入の可能性が低い消費者だ。マスクはAfDを支持すればドイツでテスラは売れなくなることも分かっていただろう。 


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