一味違う「復讐モノ」
冬シーズンの深夜ドラマのなかでは、復讐モノもまた楽しめる作品があった。
『家政婦クロミは腐った家族を許さない』(テレビ東京)は、養護施設に育って裕福な家庭の養女になったものの、おぞましい体験をしたクロミが、家政婦として入り込んだ起業家の妻の家庭を破壊する物語である。クロミの名前は、本人が養女に行った先から救ってくれた家政婦の名字をとったものだった。
クロミには、関水渚が起用された。映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』シリーズのなかで、詐欺の片棒を担ぐ「子猫ちゃん」役のひょうきんな演技がはまり役だと、これまで考えてきた。
家政婦となった灰原家で、美容機器メーカーを立ち上げた翠(藤原紀香)とその夫・蒼太(高橋光臣)らをともに殺し合いの事態にまで、追い込んでいく演技は凄まじい。この連載でもふれたように、深夜ドラマはゴールデン帯や映画などへの「ジャンピング・ボード」である。関水の今後が楽しみである。
『地獄の果てまで連れていく』(TBS)は、清楚なイメージの佐々木希のイメージを大きく変える作品だった。
橘紗智子(佐々木)は、父に汚名を着せたうえに殺した花井麗奈(渋谷凪咲)の家に、整形してベビーシッターとして、入り込む。麗奈の夫の誠(井上祐貴)は、高校時代に橘(佐々木)の後輩で慕っていた。
ついに、麗奈は逮捕されるのだったが……そのこどもにシリアル・キラーの素質が受け継がれたのではないか、というラストシーンはハッピーエンドが「お約束」のテレビドラマとはひと味違う。これも深夜帯の自由度だろう。
麗奈(渋谷)のシリアル・キラーぶりも話題になったが、佐々木の抑えた演技もまた際立った。ふたりにとって、転機となる作品だろう。
