2025年12月6日(土)

Wedge REPORT

2025年5月7日

 万博会場内を見れば、難しい状況を乗り越えて完成にこぎつけた建設物を数多く見ることができる。大林組、清水建設、竹中工務店の3社がそれぞれ共同企業体(JV)を組み、工期を繰り上げて完成させた大屋根リングは、特に海外館関係者や来場者らの評価が高い。世界最大の木造建築物として、日本の貫工法を活用した独特の光景はドバイ万博などには見られなかった威容だ。

 リングの建設は当初は計画に含まれていなかったため、会場建設費の予算が増額されたことで世論の激しい批判を受けた。依然議論はあるものの、ある海外政府関係者はリングの姿は「京都の清水寺のようだ」と感嘆するように、リングは日本らしい万博の雰囲気を醸し出している。会場に点在する多くのアート作品も、日本らしさが感じられる。

撤退、規模縮小…トラブル相次いだ海外パビリオン

 ただ、このような成果は容易には得られなかった。特にコロナ禍によるドバイ万博の開催遅れなどを背景に、各国パビリオンの準備が大幅に遅れたことが会場整備に混乱を招いた。

 各国の計画は設計段階から遅れ、図面の用意すらできていないのに、建設業者を探す国もあった。さらに資材価格が高騰し、各国政府が想定した予算と実際のコストが大きく乖離する中、建設契約をゼネコンが受けられない事態が鮮明に浮かび上がっていた。

 この状況への懸念は、事態が表面化する数年前から業界側が万博を主催する日本国際博覧会協会に伝えていたものの、協会の反応は当初、極めて薄いものだったという。関係者は「聞く耳をもってもらえなかった」と述べて憤る。

 建設業界内で懸念が高まる中、実情を指摘したのが、日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長(清水建設相談役)だった。2023年6月の会見で宮本氏は万博をめぐり「本当に(建設に)間に合うのか」と発言。海外館が具体的な設計にも着手できていない状況が広く伝わることとなった。

 宮本氏の指摘通りに、海外政府の独自設計による「タイプA」パビリオンの建設遅れの実態はその後、万博開催の最大の問題となっていく。

 同年11月には、タイプAを計画していたメキシコなどの撤退が判明。その後もタイプAを予定していたロシアも撤退した。イランやギリシャ、南アフリカなども撤退し、最終的には少なくとも12カ国が撤退したとみられている。

 理由はさまざまあるが、パビリオン建設が間に合わないと判断した国があったことは確実だ。タイプAを建設する計画だったとされる国が、別のタイプに移行を余儀なくされるケースも相次いだ。

完成に向けた作業員らの〝工夫〟

 万博の会場建設をめぐっては、海外政府の準備遅れだけが問題だったわけではない。

 まず、夢洲という土地の問題だ。本来は建設残土などの廃棄物処分場で、会場予定地となった土地は当初、水も電気も供給されていない状況だった。そのような中、建設会社は自前で自家発電設備を持ち込んだりするなどして、工事を続けざるを得なかった。

 また軟弱な地盤で、通常よりもはるかに深く杭を打たなければ大型建設はできない。複雑な形態のタイプAパビリオンの建設を断念する国が相次いだ理由のひとつはそこにあった。


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