2025年6月16日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年5月13日

 ワシントン・ポスト紙コラムニストのイグネイシャスが4月3日付けの論説‘Trump bets on a ‘Reverse Kissinger’’で、トランプ大統領はその新たな安全保障戦略として、中国とロシアの間に楔を打ち込む「逆キッシンジャー」という難度の高いひねり技に賭けようとしているのではないかと指摘している。要旨は次の通り。

(Anna Moneymaker ・スタッフ/Anadolu /・寄稿者/gettyimages)

 世界の軍事経済秩序に関するトランプ大統領の新たな政策思考の背後には、重大な欠陥がある。彼は、新たに力を得た米国がロシアを中国から引き離し、中国とロシアの間に割って入って実権を握ることができると確信しているようだ。

 しかし、トランプのロシアと中国に対する政策には大きな危険がある。彼は、ロシアをウクライナとの和平協定に引き込むことによって、米国はロシアと中国の間に力の均衡を創ることができ、世界に3つの勢力圏を創出できると考えているようだ。

 この新戦略は「逆キッシンジャー技」と表現されるが、その期待は単なる幻想に終わるだろう。多くの分析家は、ロシアと中国は「天井のない協力関係」を継続すると予測している。その上、ロシアと中国の力を抑止しようとする米国の意欲を疑う国々が増えてくれば、ヨーロッパとアジアで米国の同盟関係は深刻なダメージを受ける恐れがある。

 プーチンと習近平の関係は、数十回の会談を経て、1000時間にも及ぶ議論を通じて築かれた個人的絆であり、トランプが両者の関係をコントロールできると考えているなら、それは大きな誤りだ。両首脳が会談するときの最重要議題の1つは米国が中露を分断しようとするのを見越して対処することであり、両首脳とも米国は衰退する大国で、トランプは新たな大国間ゲームの中の足元の定まらない頼りないプレーヤーに過ぎないと見ている。


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