最低摘み取り料が大人10ドル(約1000円)と、物価の高いオーストラリアでも割安なのを魅力とする。摘み取り量に応じて追加料金を支払う仕組みになっている。
農園主は「無農薬なので、その場で安心してベリーを食べられる。地下水汚染防止を考えるなど環境に優しい循環型農業を心がけている」と話す。加工品なども農園併設の直売所で販売している。
国産を支える国民
メルボルン市内のスーパーマーケットを覗くと「国産」を薦めるポスターや食品などにカンガルーのロゴがプリントしてあるのに気がつく。
「バイ・オーストラリア」キャンペーンだ。四方を海で囲まれたオーストラリアは、国民の食料安全保障に対する意識が強く、地域経済を活性化し、持続可能な農業を維持する運動や政策を行ってきている。
その一つが国産品購入を提唱する運動で、100年も前から行われているという。商品にそのことを明示するカンガルーのデザインの「オーストラリアン・メイド」のロゴも1986年に導入された。
ロゴは2007年に「オーストラリアン・メイド、オーストラリアン・グロウン」(AMAG)に改称され、生鮮食品および加工食品にまで拡大された。国産農産物の旗印になり、運動の中心的な役割を果たすようになったという。
オーストラリア連邦政府は2016年に食品原産地表示に関する法規制を導入し、国内で小売販売されるほとんどの食品に、原産地表示を義務付けた。この制度の中心には、「オーストラリアン・メイド、オーストラリアン・グロウン」ロゴが組み込まれている。
このAMAGのロゴは、2012年の時点でオーストラリア国民99%に認知され、支持されることになった。オーストラリア人にこのロゴについて聞いたところ、「このロゴはオーストラリア製を意味し、食品やここで製造された他の製品に表示されている。通常は高価だが、多くの人が購入しようとする」そうだ。筆者が購入したイチゴにも明示してあった。
この運動をオーストラリア政府がさらに後押しする。2025~26年度連邦予算では、「バイ・オーストラリア」キャンペーンに2000万豪ドル(約19億円)が割り当てられ、この運動を強化しようとしている。
この運動は農産物に限ったことではないが、オーストラリア国民が農業の持続性に貢献しているとの認識が土台になっている。
つまり、農業補助の予算が少ない代わりに、消費者が自国産農産物を積極的に購入することを、政府が支援している。つまり、政府による直接補助ではなく、国民の購買行動によって農業が支えられているのである。
