コメの価格が下がらない理由
なぜコメの価格が下がらないかと言えば、実は、自民党の農水族や農協がコメの価格を下げたくないからだ。これまで、生産調整などによって何とかコメの価格を下がらないようにしてきたのに、たまたま上がってくれた。これを下げようという気がないのは当然だ。
しかし、コメの価格を下げるのは簡単である。需要よりも供給を増やせば良い。そのためには、備蓄米の放出、コメの増産、コメの輸入の3つの方法がある。
備蓄米の販売については、買い戻し条件が付いている。売った後に買い戻すのであれば、現在供給が増えても将来供給が減ることになる。農水省の言い分としては、備蓄米は元のレベルに戻しておかなければならないのだから、買い戻し条件が付いているのは当然だということになる。
これでは備蓄米を買った業者も安心して売ることはできない。つまり、供給は増えない(熊野孝文「これは暴動が起きるレベル…上がり続けるコメ価格、なぜ備蓄米放出でも下がらないのか?笑いが止まらない人たちがいる現実」2025年5月2日、参照)。
確実なのは増産である。農水省は、減反はしていないと言うが、あの手この手の事実上の減反を続けている。そもそも、コメの価格が倍になったのなら、本来農家は増産するはずだ。価格が倍になって増産しないものがあるだろうか。
農水省は、「農業生産は工業生産と異なって、そう簡単に増産できない」と言うだろうが、作付面積を増やす、より多くのコメをとれる多収米にするなど様々な方法がある。ただし、すでに田植えの時期だから、間に合わない可能性がある。
増産が間に合わなければコメの輸入である。コメを輸入しても日本の対米貿易黒字9兆円のうちのわずかな額にしかならないから、トランプ大統領へのプレゼントとしてはインパクトがないかもしれないが、ないよりはましだろう。
難しいのは党内の反対を抑えること
しかし、難しいのはコメの価格を下げることではなくて、党内の反対を抑えることである。江藤氏の発言を受けて、小泉氏は石破茂首相に対しても「農政改革に対する強い意思を示してもらいたい」と注文したという。首相について「農水族の非主流派で『減反ではなく増産だ』と誰よりも言っていた」と指摘し、首相が農水相を務めた当時は農水省や党内の抵抗によって、実現できなかったとし「首相の職責で今こそ農業改革の断行を」と訴えた」とのことである(『自民・小泉氏、江藤農水相のコメ発言に「すべきでない」 石破首相には「農政改革を」訴え』産経新聞2025年5月20日)。
つまり、小泉氏はコメの価格を下げるために増産が必要だと認識し、それが自民党内の反対でできないときは、首相に責任を取って欲しいと言っている訳だ。なかなかの政治家である。コメの価格を引き下げることができたら、小泉氏は、生煮え、準備不足との批判を十分に跳ね返すことができるだろう。
