2025年12月6日(土)

田部康喜のTV読本

2025年5月28日

 トランプ大統領とともに投資計画の共同記者会見、その前には就任式に招待された。さらに今回の同行である。かつて日本企業のトップがこのような待遇を米大統領から受けた例があったであろうか。

 バフェット氏の生涯の軌跡を振り返る前に、孫正義氏に触れた理由とは何か。日本のメディアではほとんどというかまったくといっていいほど報道されていないが、ソフトバンクグループの経営方針は、バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイを手本としているのである。

 それは大雑把にいえば、実業と投資のベストミックスを模索しながら、業容を拡大しているところにある。ちなみに、ソフトバンクグループの26年3月期の投資額は400億ドル(約5兆8000億円)に及ぶ。

志高く 孫正義正伝
井上 篤夫 (著)
¥1078 税込

 『スノーボール改訂新装版 ウォーレン・バフェット伝』と、孫正義氏の正伝ともいえる作家の井上篤夫氏による『志高く』(実業之日本社)は改訂につぐ改訂を続けている。両著作を読むと、バフェット氏と孫氏が幼少のころから父の事業を手伝いながらビジネスを学び、日ごろはあまり背広などの衣服や食べるものにも贅沢をこのまず、投資成績は単なる数字であって、信用を第一とする姿勢など、共通するところが多いことに驚かされる。

 そして、バフェット氏が遺産の一部は子孫の財団に、全体の多くを息子のように接している24歳年下のマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏の財団に寄付することを表明しており、すでに実行されている巨額の資金もある。「カネは運用するよりも使うほうが難しい。ビル・ゲイツ氏はそのプロであるから預ける」と語っている。

 孫正義氏もまた、東日本大震災後に100億円という当時の日本経営者としては破格の寄付をし、自らの財団を立ち上げて被災地の母子を助けている。幼少期からの教育に力を入れる財団も運営している。

 孫氏は、ビル・ゲイツ氏と友人である。ゲイツ氏をはさみながら、バフェット氏の経営手法に敬意を払っている構図は興味深い。バフェット氏の経営手法の後継者は孫氏といってもいいだろう。

日本でも広がる「分散投資と長期保有」の誤解

 長々と回り道をしてしまった。バフェット氏の軌跡に戻りたい。伝記の標題の「スノーボール」とはなにか。バフェット氏が各地の大学などで講演する際の話からとられている。

 「私は小さな雪の玉(スノーボール)をずいぶん若いときから固めた。10年遅く固めはじめたら今の山の斜面のどこにあるかは、だいぶ違っていただろう。だから、私は学生たちに、ゲームの先に行くように勧める――なにも大がかりにやることはないが、ゲームの後をついていくよりはずっといい」

 幼少期から父親が営む食料品店で働き、のちに父親は共和党の下院議員となった。新聞配達でこつこつカネをため、友達を競馬場に誘っては、経験の浅い観客が、2等や3等でも当選金が出るのに捨ててしまった投票券を拾ったりもした。


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