フジ株主総会に見るアクティビストの位置づけ
6月25日のフジ・メディア・ホールディングス(HD)の株主総会では、アクティビストの株主提案による取締役候補だった北尾吉孝氏(SBIHD会長兼社長)への賛成率27%に対して、会社提案の清水賢治社長は82%の賛成票を得て、現経営陣が信任された。
アクティビストの推す経営陣の主張は、フジの不動産を売却し、テレビ局は番組制作と放映に特化しろということだった。つまりは、不動産収入があるからテレビ局は甘えてしまい、本気で番組制作をしないのだ、不動産を売却してしまえば、しっかり番組制作に取り組むという訳だ。
アクティビスト株主は、企業には関心がなく、企業の保有する財産に関心があることも多いのだろう。それは当然で、アクティビスト株主がいかに優秀でも、千差万別の様々な企業の経営が分かる訳ではない。できることは関係のない資産は売却して、配当にすることだ。
事業会社が事業会社を買収するなら、企業の経営を理解して買収するのだから、何らかのシナジー(相乗効果)を生かして経営するのだろう。実際には、あると思っていたシナジーがなかった、買収価格が高すぎた、買収された企業の技術やノウハウが予想外に陳腐化していたなどの要因により巨額の損失を招くことも多いのだが、意図としてそういうことだろう。
フジHDの大株主は、どういった株主を代表しているか分からない信託銀行と村上ファンド系の大株主である野村絢氏を除くと、東宝、文化放送、NTTドコモ、関西テレビ、電通などである。これらは商売仲間のようなものと言える。
東宝は、フジが資本基盤の弱い会社になったら困るだろう。フジが不動産を売却してしまえば、極端な場合、映画の共同制作への出資もできない会社になるかもしれない。東宝としては、テレビ出身の社長でないと信用できない。
アクティビストに資産を狙われないためには
多くの企業は、アクティビスト株主は嫌いだろう。だが、アクティビストに狙われるのは資産を持っているからである。なら、なぜ資産を持つのだろうか。本業に注力していれば、同業あるいは近接業種以外の企業に狙われることは、おそらくはないだろう。
資産リッチな企業の言い分としては、本業は浮き沈みが激しく、日本では雇用の維持が大事で簡単には解雇できないのだからいざという時の雇用リストラ資金が必要だ、余裕資金があってこそ野心的な投資に踏み込める、などの反論が考えられる。
では、実際にこれらのことを実行してはどうだろうか。まず、野心的投資をする。しかし、野心的な投資で大失敗をする可能性もある。実際は言うだけで難しい。
雇用を保証するためなら、雇用リストラにおける割増退職手当引当金を作ってはどうだろうか。これでは保証ではなくて手切れ金だと言われるかもしれないが、実際に、退職金を1000万円から2000万円上積みして希望退職を募集すると希望者が多く出てくるようだ。従業員の納得を雇用保証ではなく、解雇補償金で得ても良いのではないか。
保有の不動産などを割増退職金引当金に充てる。ついでに、経営者にも割増退職金を付けてもらえばよい。あるいは、下請けや協力会社への補償金も積み立てれば良い。これを労働組合と協定を結んでおけば、アクティビストが送り込んだ新しい経営者が来ても資産を解雇補償金以外には使えないのだから、配当として株主に配ることはできない。これにより、余剰資産目当てで買収されるリスクは減少する。
