2025年12月6日(土)

未来を拓く貧困対策

2025年7月10日

厚労省はどのような理由で不開示決定にしたのか

 本田氏は、13年8月12日に公文書の情報公開を求めた。これに対して、厚労相は9月13日に不開示の決定を行った。その理由を次のように述べている。

 本件対象文書については、予算編成前の政府内部の検討段階にとどまる未成熟なものであり、こうした検討段階での未成熟な情報を公にすることにより、国民、とりわけ生活保護を受給している方々に対し、「生活保護費が減額される」又は「生活保護費が増額される」といったさまざまな誤解や憶測を招くとともに、実際の生活保護の受給額とことなることになれば、不当に国民に混乱を生じさせるおそれがあるため、法5条5号の情報に該当する。
出所:異議申し立て決定書(平成27年5月22日付)、本田氏から提供

 ちなみに、情報公開法5条5号は、「国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの」と定めている。

 この理由を読んだとき、本田氏は、「カチンときたわけです」という。

 「情報公開の手続きをした段階で、もう生活保護費の削減は始まっている訳です。いまさらはじまっているものを、国民の誤解を招くというのはおかしな話でしょう。誤解を招きかねないのであれば、そうならないよう説明をすればよいでしょう」

 本田氏はそれまでも、何度か情報公開をしたことはあった。しかし、異議申し立てをしたことはなかった。怒りに任せて、2時間ほどで申立書を書きあげ、厚労省に提出したという。弁護士など、第三者に相談することはなかった。

厚労省がどうしても隠したかった2枚の公文書

 図表1は、本田氏が厚労相に情報公開を請求し、公文書を入手するまでの経過を一覧にしたものである。原典はすべて黒字であるが、一部を筆者の手で赤字に変更している。

 注目したいのは、15年1月27日の「審議会が対象文書の見聞及び審議」と、3月2日の「審議会が厚労省から補充説明理由書を受理」である。この経過は、審議会の答申書に書かれたものを、本田氏が転記されたものである。なお、筆者も本田氏を通じて答申書の写しを入手した。

 1月27日に、審議会は対象文書を手元においてその内容を確認し、開示・不開示の妥当性を審議した。ここで、総務省の担当者を通じて、厚労省に対して、いくつかの質問や指摘がなされたものと推測される。

 3月2日に、厚労省は補充理由説明書を提出している。この補充理由意見書では、「世帯類型ごとの基準額」および「生活保護基準の見直しによる財政効果」と題する公文書を除く部分については開示してもよいとした。しかし、この2枚は、不開示を維持するよう求めている(図表2)。

 厚労省は、この2枚の公文書の公開が、社会にどのような影響を与えるのかを認識していたのである。


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