2025年12月6日(土)

未来を拓く貧困対策

2025年7月10日

 「知る権利」とは、国民が国の政治や行政についての情報を知ることのできる権利である。民主主義国家における国民の基本的権利として、言論・報道の自由や情報公開法制化を支えるものである。

厚生労働省が「不開示」とした文書はどう開示されたのか(WEDGE)

 では、「知る権利」が蔑ろにされるとはどういうことか。そして、「知る権利」を守る最後の砦は何か。生活保護引き下げの最高裁判決は、長く語り継がれるリーディング・ケースとなるだろう。

 多くの人が存在すら知らないだろう情報公開・個人情報保護審査会が、最後の砦として果たした役割を語ろうと思う。

「不開示」からの逆転

 前編「生活保護減額「違法」の最高裁判決はジャーナリズムの勝利でもあった、争点を変えた一つのスクープ、「秘匿」文書はどう公開されたのか?―生活保護最高裁判決の舞台裏(前編)」では、情報公開で入手した公文書が与えた影響を説明した。

 それは端的に言えば、基準改定の具体的内容を部外秘扱いとして秘匿し、専門家ではなく政治家への説明を優先した厚生労働省の対応を明らかにするものであった。

 公文書は、元北海道新聞編集委員の本田良一氏(66歳)が入手したものである。厚労相は、当初、本田氏の請求に対して、「不開示」の決定をした。

 これに対して、本田氏は異議申し立て(筆者注:現在は審査請求)を行った。情報公開・個人情報保護審査会は、本田氏の意見を入れて不開示決定を取り消した。つまり、審査会の判断次第では部外秘扱いとされ秘匿された公文書の存在が明らかにされることはなかった。もしかしたら、判決の内容もまったく違ったものとなっていたかもしれない。

 筆者も、研究者として身を立てることができたのは、国や地方公共団体に整備された情報公開制度があったからである。一般の方とは少し違った視点で注目をしていた。

 そして、判決を読んで、「この最高裁判決は、知る権利を学ぶためのリーディング・ケースとなる」との思いを強くしている。本稿では、この点から判決の意義を述べていくことにしたい。


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