2025年12月5日(金)

食の「危険」情報の真実

2025年7月25日

 AI同士の評価は、まったく同じ評価のAIもあれば、どういった理屈かは不明だが、やや異なる挙動を示したAIもあるようだ。内容の本質にかかわらないわずかな情報の違いだが、評価が変わってくることがうかがえるだろう。

使いこなすために

 人間の思考や認知のスタイルは、実は文明開始以降ほとんど変化がないといわれている (『進歩した文明と進化しない心~進化心理学で読み解く、私たちの心の本性』石川幹人監修、カンゼン)。我々が情報を解釈、評価する際に、さまざまな思考の偏りやひずみが生じていることは広く知られており、今回の実験で人間にみられたような「認知バイアス」は、日常生活のさまざまな場面で発生している。

 たとえば、自分の選好している仮説を捨てたがらず、そうでない情報は無視しやすい傾向を「確証バイアス」や「マイサイドバイアス」などという。原発の是非、現兵庫県知事に対する評価、インバウンド政策など、人によって意見が分かれたり、意見が先鋭化しやすいトピックだったりすると、こうしたバイアスが強く確認できる。

 今回、遺伝子組換え作物をトピックとして選んだのも、多くの観点で遺伝子組換え作物が危険であるとする科学的な根拠が筆者の知る限りほとんどない一方で、かつてメディア等の影響もあって消費者にネガティブなイメージが根付いているためである(『誤解だらけの遺伝子組み換え作物』小島正美、エネルギーフォーラムなどに詳しい) 。

 自分の能力以上のことはAIに聞けない。今回のように、AIへの問いかけの仕方や表現によって出される回答のニュアンスも変わってくるため、結局のところ、問いかけをする人間サイドの能力に、AI回答の精度も依存せざるを得ない。社会のすう勢として、今後、AIの活用能力が求められる場面も多くなってくることが予想されるが、AIへの問いかけセンスを磨くことがその一歩かもしれない。

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