2025年12月5日(金)

プーチンのロシア

2025年7月29日

 若くして軍の最高幹部に上り詰めたグドコフ氏の経歴は華やかだ。1983年に極東ノボシビルスクで生まれ、同市の軍事学校などを卒業後、ロシア太平洋艦隊傘下の第155独立親衛海兵旅団の幹部となり、その後司令官となった。ロシア軍のシリアでの軍事作戦を指揮し、2022年2月のウクライナ侵攻開始とともに作戦に参画した。

 グドコフ氏はそこで頭角をあらわす。同海兵旅団は22年3月、23年5月と、その功績を称えられて相次ぎ勲章を授与されている。グドコフ氏自身も23年に「ロシア英雄賞」を授与され、25年2月にはプーチン大統領から最高軍事勲章を授与された。

 そして3月には海軍副司令官に抜擢されることとなる。出身地のノボシビルスクでは彼の功績を記念する銘板が設置された。

虐殺に関与か

 しかし、華やかな立身出世の一方で、彼の働きには深い影があった。グドコフ氏が指揮した第155独立親衛海兵旅団はウクライナ侵攻開始直後に、民間人の大量虐殺が発覚した首都キーウ近郊の都市ブチャやイルピン、ホストメリなどでの作戦に参画したとされる。

 ウクライナメディアは、同部隊がそれ以降もウクライナ軍兵士や民間人の虐殺などに繰り返し関与しており、そのような働きによりプーチン政権の〝お気に入り〟の部隊となっていたと分析している。

 ロシア軍が撤退した後のブチャでは約400人の民間人が虐殺された実態が判明して世界的に衝撃を与えたが、その部隊を表彰したプーチン政権の行為も世界を驚かせた。〝汚れ仕事〟を遂行することが、政権の評価を受けるという構図を浮かび上がらせたからだ。グドコフ氏の出世は、そのような忠誠心を政権が高く評価した結果だとも受け取れる。

クルスク州の闇

 そのようなグドコフ氏がウクライナ軍の侵入を許したクルスク州に派遣されれば、さらに激しい戦闘を買って出たことは想像に難くない。クルスク州をめぐっては、ウクライナ軍が24年8月に電撃的に進軍し、一時は約1300平方キロもの領土を制圧した。第二次世界大戦以降、一度も外国に領土を制圧されたことがないロシアには衝撃の事態だが、兵員不足からロシアは北朝鮮に兵士の派遣を要請し、約1万2000人ともいわれる北朝鮮兵士らがクルスク州内で軍事行動に参加したとされる。

 面子をつぶされながらもロシアはクルスク州の奪還作戦を展開し、今年4月末にはゲラシモフ参謀総長がプーチン大統領に同州の奪還を報告した。ロシア大統領府は5月、プーチン大統領が自ら同州を訪問し、地元政府幹部らと面会したと発表するなど、クルスク州の奪還を国内外にアピールするパフォーマンスを見せた。


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